トップインタビュー:楽天執行役員トラベル事業長の山本考伸氏

  • 2014年6月5日

合併でグループ他社との協力強化
「宿泊プラスα」で体験素材の販売へ

   2014年4月1日、楽天は楽天トラベルを吸収合併した。グループ他社とのシナジーをさらに発揮する目的で実施したもので、システムや人的活用の効率化もはかっていく考えだ。合併により、今後楽天のトラベル事業はどう変化していくのか。元楽天トラベル代表取締役社長で、現在は執行役員トラベル事業長を務める山本考伸氏に合併の効果や今後の戦略を聞いた。


-吸収合併の意図を改めて教えて下さい

山本考伸氏(以下敬称略) 我々はトラベルだけでなく、「ワンカンパニー、ワンチーム」の楽天グループとして消費者にサービスを提供していこうと考えている。合併により、各事業間の顧客の相互送客やプロモーションを一緒におこなうことで、価値の創造を強化していく。また、楽天ブランドで楽天会員向けの旅行事業サービスという位置づけを強めていく。

 今後は、楽天市場でこれを買った人にはこういう旅行がお勧め、というようなユーザーのセグメントごとに提案をしていく。1つのサービスを利用した顧客に他の楽天サービスも利用してもらう「クロスユース」を、楽天グループ全体で促進し、グループ会社との間で相互送客を強めていきたいと考えている。

 2013年12月の1ヶ月の利用者で、1年以内に楽天スーパーポイントが利用可能な他のサービスを使った場合をカウントしたクロスユース率は55.4%。今後、クロスユースの拡大に楽天トラベルとしてどう貢献していくのかが一番のポイントとなるだろう。

 楽天市場では取り組みの1つとして、トップページの「最近チェックした商品」コーナーで、楽天トラベルで最近見た商品が表示されるようにした。例えば、画面にスーツケースとガイドブックと旅館がセットに出てくることはあるだろう。こうしたリコメンデーションシステムをグループで共有化するよう移行しているところだ。


-合併でよりグループ間の人材交流が可能になりましたね

山本 楽天トラベルと他グループの人材交流は以前からおこなっているが、合併により更にやりやすくなった。旅行事業は特殊な事業だと我々自身も思いがち。旅館のプロモーションは経験者が得意というのは事実だが、楽天市場でEメールのプロモーションを担当していたスタッフが楽天トラベルに参加し、事業特性が違うからこそ培ってきたスキルを活かすこともできるだろう。

 例えば、楽天市場では目的を持って買いに来る場合だけでなく、思いもつかなかったものをEメールやLINEのメッセージを契機に衝動買いしてしまうこともある。そうした衝動買いを誘発させるプロモーションの担当経験者が、楽天トラベルのメールマガジンやプロモーションを担当することで、「来週末、晴れていたら箱根に行こう」というような需要喚起のプロモーションなど、異なる視点で色々な意見が出てきている。

 逆に、楽天トラベルからも、宿泊施設と契約を結ぶだけでなく、施設の良さをウェブサイトでいかに訴えるかなどのコンサルティングも担当する「インターネットトラベルコンサルタント(ITC)」経験者をグループ他社に送っている。例えばヘアサロン予約サービス「楽天サロン」で、旅館の良さを見つけてきたセンスで美容院のよさを見つけていくことができるだろう。