シンガポール政観とSQとJTB、MICE送客増で提携、早期回復へ強み集結

  • 2024年1月31日

 シンガポール政府観光局(STB)とシンガポール航空(SQ)とJTBは1月31日、シンガポールへのビジネスイベントの誘致や新たな需要の創出に向けた連携協定を締結した。期間は2年で、インセンティブや研修旅行をコアターゲットとしてマーケティングやJTB側の人材育成などの分野で協力して取り組んでいく。

(左から)STB北アジア局長のセリーン・タン氏、JTB執行役員仕入商品事業部長の藤原卓行氏、SQ日本支社長のシア・ナムクン氏

 記者説明会でSTB北アジア局長のセリーン・タン氏は、シンガポールが「アジア太平洋地域のビジネスへの玄関口」であること、「ビジネスとレジャーの両方で最高の体験をできる」こと、「コンパクトな都市に様々なニーズに答える施設やホテルが揃う」こと、サステナビリティの取り組みが進んでいることなど強みを列挙。そして今回の提携でSTBは「Business Events in Singapore(BEiS)」や「INSPIRE Global2.0」の金銭的/非金銭的サポートのほか、企画に関する調整やスムーズな申請フローの実現、さらにアクティビティの共同開発などのマーケティングや人材育成などもサポートすることを明かした。

 またSQ日本支社長のシア・ナムクン氏も「日本最大級の旅行会社であるJTB、親愛なるパートナーであるSTBとこのような取り組みができることを心から嬉しく思う」「我々のワールドクラスのサービスは地上から機内まで続く。ご満足いただけるよう日々精進していく」などと挨拶。

 続いて旅客営業部長の木原哲夫氏が、3月4日以降には日本の5都市へ毎日10便、1日あたり約3000席を運航し、さらに全都市の運航時間帯が近いことなどを紹介。なお、この便数で2019年比の回復率は90%だが、SQ西日本地区支配人のクリスティーナ・リン氏によると冬ダイヤからは羽田の4便目も復活する予定で、これにより100%となって週77便3000席以上を運航することになるという。

 またMICE向け特典では、機内でのウェルカムアナウンスメントやオリジナルのヘッドレストカバー、超過手荷物料金の割引、ラウンジアクセス、専用チェックインカウンターなどを提供できると強みを説明。これらはJTBに限らず利用可能ではあるが、リン氏によると今回の提携を受けてJTBについては条件などの面で柔軟な運用を検討する。

打診は2年前、2025年にはMICE需要完全回復へ

「Another Singapore」ロゴ。多様性をあらわすカラフルな背景に象徴するアイコンを配置した

 提携の概要はJTB執行役員仕入商品事業部長の藤原卓行氏が説明。JTBでは、コロナ禍におけるシンガポールの進取的な方針を受けて、すでに2年前からMICEの早期回復に向けた提携を打診、それが今回実を結んだという。

 昨年の調査でも顧客企業のなかでビジネスイベントのリアル開催へのニーズ回復が確認できていることから、今回の提携によるSTBとSQからのサポートのもと、全国84の法人営業拠点や営業担当者、蓄積した知見、現地での安心安全をサポートする体制を武器にシンガポールの提案を強化。2019年比で、2024年にMICE関連の送客人数を70%、25年に100%に戻すことを目指す。

 具体的には、STB、SQ、JTBの3社合同で現地を訪問して利用可能なコンテンツの調査・開発をすでに進めているほか、JTB法人サービスサイトでも情報発信を強化。さらに「サステナビリティ」「ファミリー&チーム」「ラグジュアリー」の3つのテーマで、インセンティブや研修旅行、ミーティングなどでシンガポールを訪れる際の魅力を紹介する冊子「Another Singapore」も作成。印刷物でありながらQRコードを通して動画でも詳細を確認できるようにした。

人材育成、協定終了後も続く「アンバサダー」検討も

JTB藤原氏

 一方、人材育成では「販売をリードする人材を育成するプログラム」を構築して「よりスピード感ある販売展開」を実現したい考え。3社共同でのセミナーを開催するほか、目的に合わせた現地研修を実施してSTBとSQの担当者も同行し、現地支店でのグループワークを経て帰国後の新しいコンテンツやコースの開発、レポートや事例の社内共有に繋げる狙い。

 さらに、特にシンガポールのMICE販売を促進できるスタッフを3社が共同で認定する「アンバサダー」制度についても協議を進めているところ。初めての試みで詳細は未定だが30名前後の認定を計画しており、協定の期間終了後にも継続できる仕組みを模索しているという。