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「リーデルツアー」の特別感、JTBグランドツアーが探す未来のツアー

キーワードは「特別感」と「自由度」
事前アンケートで要望把握、さらなる企業コラボに可能性も

(右から)JTBグランドツアー&サービス営業推進部販売促進・開発課課長の綾部正洋氏、企画販売部の吉田由香氏

「オーストリア リーデルグラス紀行8日間」。JTBグランドツアー&サービスが6月末に販売を開始したツアーで、その名の通り高級ワイングラスメーカーのリーデルとの共同企画で実現したものだ。編集部には美食やワインをテーマにしたツアーは多くの情報が寄せられるが、道具に着目するのは極めて珍しい印象。記事のアクセスも良好だった。旅行商品がコモディティ化しFIT化の波が押し寄せるなかで、こうしたユニークな企画がどのように誕生したのか。JTBグランドツアー&サービス営業推進部販売促進・開発課課長の綾部正洋氏と企画販売部の吉田由香氏へのインタビューを通して見えてきたのは、JTBグランドツアー&サービスの独自性だった。

リーデルとの共同企画ツアーの概要を改めてお聞かせください

綾部正洋氏(以下、敬称略) 創業260年以上の歴史を持つリーデルと共同で企画したもので、オーストリアの本社工場を見学したり、本社近くのホテルグレイルに宿泊し、すべてのワインをリーデルのハンドメイドデカンタでサーブしてくれるホテル内の「リーデル・ルーム」で夕食を取ったり、といった内容としている。

吉田由香氏(以下、敬称略) 旅行代金がエコノミークラスで69万8000円、ビジネスクラスで109万8000円のツアーだが、おかげさまですでにほぼ催行が確定し、追加設定を準備しているところだ。

共同企画が実現に至った経緯を教えてください

綾部 弊社を利用するお客様は基本的に「本物志向」で、食事でも一流のワインを頼む方が多い。しかし、欧州の消費者はこだわりがないのかリーデルのグラスが使われるようなレストランは少ない。せっかくおいしいワインを飲めるツアーなのにもったいない、という声がお客様から上がっていた。

 一方、我々も勉強のために、ほぼ全社員が自主的にリーデル主催のセミナーを受講していて、グラスによってワインの味が劇的に変わることを実感していた。この経験から共同で何かできないかと考えて私たちの方からリーデルにアプローチし、先方にとっては初めての試みだったが広告宣伝にもなるため快諾を得られた。

リーデルのようなツアーの共同企画は他に例があるでしょうか

綾部 リーデルが初めてで、今後は積極的に取り組んでいきたい。

 弊社の年間の取扱人数は約3000人で、欧米諸国、特に欧州へのお客様が多い。秘境と呼ばれる地域へのツアーはまだJTBブランドの安心感が通用するが、欧州方面に関しては、リーデルとのツアーのような目新しい企画を提案しないと選んでもらえなくなりつつある。これからは「特別感」を意識した企画の考案と、我々と一緒に取り組んでくれる企業を探すことが必須だと考えている。