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グローバル時代の取りっぱぐれ回避術-どうする海外との取引

日本を出れば掛売り中心、支払遅延も頻発
適切な与信管理で倒産・不払い対策

田中氏  日本旅行業協会(JATA)とその指定事業委託会社のジャタはこのほど開催された「ツーリズムEXPOジャパン2018」で、海外企業に対する与信管理と不払い事故対応策のためのセミナーを開催した。海外旅行・訪日旅行を問わず、日本の旅行会社による海外現地企業との取引が増加し債務不履行のリスクが高まるなか、いかに安全な取引を開拓するかについて学ぶことが目的。講師は取引信用保険・与信管理大手でフランスに本社を置くコファスグループの日本法人であるコファスジャパン信用保険会社の3氏が務めた。

 なお、講師が40名近い参加者に「与信管理に関して社内規定を定めている会社の方は挙手を」と促したところ、手を挙げた人は皆無だった。セミナーの概要を紹介する。


APAC9ヶ国の支払動向を調査
「1円も戻らない」超長期の遅延が増加

コファスグループのロゴマーク  コファスグループは1946年にフランスの国営貿易保険会社として設立され、94年に民営化。現在は66ヶ国に拠点を置き、日本法人は400社以上の国内顧客を持つ。同グループは2003年から毎年、アジア太平洋(APAC)地域の企業の支払い動向調査を実施しており、支払慣行や支払遅延、与信管理などに関する実態を研究。セミナーでは最新の調査結果をもとに、APAC各国のカントリーリスクや支払いの傾向、不払い事故への対応策について紹介した。

 最初に登壇した与信業務部シニア・バイス・プレジデントの田中豊氏は、17年第4四半期にコファスグループが実施した「APAC企業支払動向調査」の結果を発表。9ヶ国・地域の2964社から有効回答を得たもので、国別の内訳は中国が34%の1003社、香港が17%の502社、台湾が13%の377社、インドが11%の325社、タイが9%の253社、マレーシアが5%の160社、日本が5%の144社、シンガポールとオーストラリアがそれぞれ3%の100社だった。

 売上高別では年間500万ユーロ未満(6億5000万円未満)が44%、500万ユーロ以上1000万ユーロ未満(6億5000万円から13億円未満)が25%、1000万ユーロ以上1億ユーロ未満(13億円以上130億円未満)が21%、1億ユーロ未満(130億円以上)が10%。業種はコンピュータや情報通信などICT産業の12%を筆頭に、化学・金属・小売・自動車・建設・繊維・農産物・エネルギー・医薬品・運輸・製紙・木材と多岐にわたった。旅行業は含まれていない。

 田中氏は冒頭で、マクロ経済の堅調な成長により、現在ではAPAC全体の国内総生産(GDP)の55%を占める中国の状況について解説。15年までは掛売りをした企業の割合は90%程度で推移していたところ、17年には約70%にまで落ち込んだが、一方で15年までは60日弱で推移していた平均売掛期間が17年には76日にまで長期化していることについて述べ、「ここ2年間は無分別な掛売りが回避される傾向にあるが、それでも競争激化や経済成長の鈍化などで、売掛期間を長く提示しないと取引が難しい状況では」との見方を示した。

 支払遅延の状況については、「支払遅延件数が前年に比べて増えた」と回答した企業は16年の46%から17年には29%に減ったものの、田中氏によれば「1円も戻らないと考えるべき」という、180日を超える「超長期」の遅延債権は増加傾向にあることを説明。特に、年間売上高の2%を超える遅延債権の割合は16年の35%から17年には47%に、10%を超えるものは16年の11%から17年には21%にそれぞれ増加していることを伝え、「2%なら月商の24%、10%なら月商の1.2倍にあたり、資金繰りに大きく影響する。主要な項目の数値の改善が、重要なニュアンスを覆い隠している」と強調した。支払遅延が起こる理由の49%は「得意先の資金難」で、得意先が資金難に陥る理由の46%は「競争激化による粗利の確保難」という。

 なお、APAC全体で見た場合も、15年は55日程度だった平均売掛期間が、17年には64日にまで伸長。「企業は売掛期間をさらに伸ばす圧力にさらされている」という。ただし国別の状況は大きく異なり、最長の日本は約100日である一方、その他の8ヶ国はいずれも80日未満で、最短のオーストラリアに至っては40日。田中氏は「日本の感覚で売掛期間を長く設定すればリスクを負うことになる」と警鐘を鳴らした。