グローバル時代の取りっぱぐれ回避術-どうする海外との取引

日本を出れば掛売り中心、支払遅延も頻発
適切な与信管理で倒産・不払い対策

APAC企業の与信管理は無防備
倒産ではなく「不払い」が主流

セミナーの様子  支払遅延状況については、回答した企業の63%が17年に支払遅延を経験。しかし遅延期間は国によって差が大きく、カントリーリスクが比較的高い中国は遅延債権の27%が、インドは17%が120日超の長期遅延で、60日未満はわずか半分程度だった。一方で、日本やマレーシアはともに8割近くが60日未満となった。問題はAPAC全体でも「1円も戻らない」超長期の遅延債権が増えていることで、売上高の2%を超える企業の割合は15年の24.2%が17年には33.3%に増え、10%を超える企業は5.1%から10.0%に増えたという。

 田中氏は調査結果について「APAC地域のビジネスでは業務改善を見込んだ楽観的な物の見方が根強く、与信管理に関しては意外と無防備な企業が多い」と総括。信用調査会社によるレポートなど、与信管理のためのツールを全く利用していない企業の割合は、最小の日本では10%にとどまるのに対し、次に小さいシンガポールでも37%、最大のマレーシアでは82%に上ることを説明し「相手方はリスクを抱える与信管理をしていないことを知るべき」と注意を促した。

 また、大事なポイントとして「新興国については、倒産に関する統計を見るだけでは状況は分からない」と強調。倒産に関する制度が充分に整備されている日本などの先進国とは違い、新興国では単なる「不払い事故」となって債権回収に困難を極めるケースが圧倒的に多いことを説明し、同社による調査の重要性を改めて強調した。


高さ際立つ「損害率」
債権回収には多くの壁

石村氏  続いて登壇した査定・回収管理部オフィサーの石村嘉氏は、コファスグループ内の集計データをもとに、APAC地域における保険事故のトレンドを解説。グループの損害率(収入保険料に対する支払保険金の割合)が世界全体では15年が52.5%、16年が65.5%だったところ、アジアだけを見た場合は15年が100.6%、16年が146.8%と極めて高い損害率を記録したことを明らかにした(ちなみに17年は世界全体並みの50.0%)。

 なお、9ヶ国・地域の事故件数のうち、法的な手続きによる倒産を理由とする支払遅延が半数を上回るのは日本のみで、その他はすべて倒産以外の不払いや夜逃げなどによる支払遅延が半数以上。特に、17年の不払い事故件数の国別割合のうち、国王の崩御による景気の低迷などで中国を上回り最も大きい22%を占めたタイは、支払遅延のほぼすべてが倒産以外の理由によるものだったという。

 コファスグループにおける観光産業の保険事故のうち、件数ベースで最も割合が大きいのは「ホテル宿泊業」で79%。山小屋やコテージなどの「短期滞在型宿泊施設」の9%、「キャンプ/オートキャンプ施設」の4%を合わせると、宿泊関連の割合が9割以上を占めた。保険金額ベースでは「ホテル宿泊業」は60%にとどまり、宿泊関連の合計は68%。事故1件あたりの規模が大きい「航空運送業」が2番目に多く、30%を占めるという。なお、国別の事故発生数は観光大国のフランスを筆頭に、以下は米国、イタリア、ドイツ、中国と続き、5ヶ国で世界全体の52%を占める。

 石村氏は最後に、海外の現地企業との取引において不払いが発生した場合の債権回収には、商習慣の違い、法制度の違い、地理的な問題、費用対効果など、多くの困難を伴う可能性があると強調。あわせて、その困難に対し「世界の約100ヶ国に及ぶコファスグループの債権回収ネットワークが役に立てれば」とアピールした。