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海外旅行はリピーター減、若年層の取り込み強化を-JTB総研セミナー(1)

  • 2014年10月2日

海外旅行は不振、国内は堅調
団塊世代のピークは終了、若者や一人旅に注目を

JTB総合研究所主席研究員の黒須宏志氏  JTB総合研究所は9月9日、都内で第1回旅行マーケットセミナーを開催した。第1部ではJTB総合研究所主席研究員の黒須宏志氏が「旅行マーケット2013-2014」と題したセミナーを実施。海外旅行の不調の要因分析や旅行市場の質的変化、足元の消費動向などを解説し、シニア層の停滞や若年層の旅行回帰に伴う取り組み強化を指摘。注目すべきポイントとして、一人旅やFIT層の増加、旅行予約の早期化などをあげた。


海外旅行、リピーターなど「コア層」の動きが鈍化

 黒須氏は海外旅行市場の低迷について、「いくつかの特殊な要因がありマイナスになっている」と説明。中国、韓国方面の旅行需要の減少や円安の影響もあるが、「今まで海外旅行で(旅行回数の)頻度を上げることで市場を支えてきた、コアな旅行経験回数の高い人達が抜け落ちてきている」と指摘した。

 同氏によると、今までは9.11やSARSなど「何か市場に事あるごとに(旅行)経験値が高い人が真っ先に回復しており、あるいは影響力が比較的少ないコア層として知られてきた」が、2013年はこうしたリピーター層の需要が大きく減少しているという。

 JTB海外旅行実態調査の「海外旅行経験回数別にみた旅行者数シェアの推移」でも、2012年と13年を比較すると、海外旅行を10回以上経験した旅行者のシェアは、13年は全体の60%を大きく超えているが、12年比では減少。実数ベースで見ても「とても大きく減少している」という。その反面、旅行経験回数が1回の層は前年並み、4回から5回の層は増加した。

 一方、国内旅行については堅調に推移しているとの考えだ。黒須氏は国内宿泊観光旅行者数の動向と、名目のGDPや雇用者報酬が連動していると説明。アベノミクスなどを追い風に、4月にあった企業の賃金ベースアップ傾向がプラスに働いているとの見方を示した。ただし、4月の消費増税後による個人消費の回復の遅れや、物価上昇の影響で実質賃金が低下していることから「地方経済を中心に個人消費への懸念が広がっている」と述べた。

 また、同氏は旅行市場全体の動向として、物価上昇に伴う旅行費用の増加が懸念材料にあがっていると指摘した。1964年から2010年までの海外旅行支払単価と旅行者数の関係をマクロな視点で見ると、旅行支払単価が減少した時にしか旅行者数が増えておらず、国内旅行も同様とした。

 足元の状況では、総務省の「家計消費状況調査」で今年の4月、5月の旅行支出は前年割れ。ただし、6月は国内パッケージツアー以外で前年超えとなっており、7月、8月以降には「若干期待ができる」と見る。さらに、日本生産性本部「レジャー白書2013」を引用し、最近5年の余暇活動を示したデータは、国内旅行、海外旅行ともに余暇活動を「最近開始・再開した」が「最近やめた」を上回っている点について言及。日本人の支出動向が変化しており、「市場が戻ってきたのでは」と期待を示した。

 こうした状況を踏まえ、秋以降の旅行市場については旅行支出は堅調に推移するとした。ただし、旅行費用の増加が旅行に与える影響については与える影響について注視していく必要性を語った。