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「RYOKAN」をインバウンド強化の推進力に-国政研シンポ

受入側だけが戸惑う「言葉の壁」
飛び越えて「RYOKAN」ブランド構築を

旅館の外国人受け入れ「まずは決断」

旅館わかば代表取締役の志賀希氏 熊本県の黒川温泉で旅館わかばの代表取締役を務める志賀希氏は、「まず決断すること!それが訪日外国人受け入れの第一歩」と題したプレゼンテーションをおこない、昨年から開始した外国人旅行者受け入れの取り組み状況と、その効果について説明した。同旅館の従業員11名の平均年齢は58歳で、英語を話せるスタッフも皆無のため、必ずしも外国人旅行者の受け入れに適した環境とはいえないものの、2012年から開始した取り組みが功を奏しているという。

 わかば旅館では手始めに、契約は締結していたものの放置に近い状態だったというBooking.comサイトの見直しを開始し、在庫情報や写真などを充実させた。また、同館の既存の英語ページの見直しをおこない、外部企業に依頼して予約システムを追加した。

 合わせて地元で働くALT(外国語指導助手)に依頼し、月に2回から3回、館内で英会話教室を実施した。その結果、脱落者もわずかに出たものの、全体的なコミュニケーション力は「外国人アレルギーがなくなり、滅茶苦茶だが何とか通じている」状態にまで向上し、外国人からのメールに対しても、Google翻訳などのサービスを利用して返信できるようになったという。そのほかには館内の案内やメニューなどについても英語版を作成し、口頭による説明を減らすための環境を整備した。

 その結果、外国人宿泊者数は2012年9月までは多くて1月あたり50人程度だったのが、2014年以降は平均して150人を超えるようになり、全体の宿泊者数に占める外国人の割合も5%程度から20%を超えるようになった。志賀氏は外国人旅行者を受け入れるメリットについて、「閑散期や平日でも利用してもらえるし、連泊での利用も非常にありがたい。売り上げの伸びに貢献している」と説明。利用者の出身国については、かつては韓国など東アジアが大半を占めていたが、現在では欧米からの旅行者も増えたという。

 志賀氏は最後に、これまでの取り組みを全て振り返った上で、「まず最初におこなうべきことは、外国人を受け入れると決断すること」と強調。取り組みにかかった費用については、予約システムの使用料が1月あたり1万5000円、英会話教室の開催が1回あたり7000円、英語メニューなどの翻訳が1時間あたり3000円で「それほどかかっていない」との見方を示し、各旅館の今後の取り組みに期待した。