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国内旅行造成、運輸業と連携強化、地域活性も-JATA経営フォーラム

  • 2014年3月11日

旅行会社と運輸業者のマッチングを

JTBの平野利晃氏 鉄道や高速バス、LCCなどの運輸業者がそれぞれの企業努力により新しい需要を創造している一方で、旅行会社の売り上げは減っている。モデレーターを務めたクラブツーリズム取締役地域交流部長の梶田隆弘氏によると、この15年で旅行会社の国内旅行売上は37%減。主な原因は、インターネットの普及でサプライヤーの直販が拡大し、旅行会社の役割が希薄になったこと。企画旅行商品のブランド力も薄れ、これに景気後退やデフレ、旅行人口の減少といった外的要因も重なったという。

 こうしたなか、旅行会社はどのような対策を展開しているのか。ジェイティービー(JTB)では今年4月、国内商品事業本部を「国内旅行企画」に分社化し、各地の事業部を統合する。同社国内商品事業本部副本部長の平野利晃氏は「内外のお客様に日本の魅力を発信し、需要を創造することが目的」と話す。

 新体制とすることで、個人向けの「エース」や団体向けの「Aユニット」を作ってきた会社が、ネット宿泊販売サイトの「るるぶトラベル」や訪日旅行のオンライン予約サイト「JAPANiCAN.com」にプランを提供するなど、多角的な展開が可能となる。また、地域活性という部分では、「感動魅力人」や「地恵のたび」などで地域と連携し、積極的に取り組んでいる。

 しかし、新興の運輸業者、特にLCCとのマッチングについては進展が見られない。平野氏はその理由を、「システムの統合やアロットの問題など、従来の航空会社との付き合いとは異なる部分にリスクを感じてきたため」と説明。モデレーターの梶田氏も“リスクのない仕入れ”という慣習を課題とし、「ここを変えられるかどうかがひとつのポイントだろう」と述べた。

GKの藤岡秀多氏 GKの藤岡氏は「一般の旅行者にも旅行会社にも同一の条件で販売するのがLCCの強みであり、そこは理解を求めたい」としながらも、2割は旅行会社の取り扱いとなっている点を強調。「今後は旅行会社と一緒にLCCを生かした商品モデルの開発に取り組みたい」と意欲を示した。

 また、地点間を安く移動、という視点で展開してきたWILLER EXPRESS JAPANも、旅行会社とタッグを組みたい意向。観光素材や商品企画力を旅行会社に求めることで、「今後3年、5年というスパンで観光路線としての商品を開発していきたい」(村瀬氏)考えだ。

 こうした議論を踏まえ、モデレーターの梶田氏は旅行会社が仕入れの考え方や仕組み、ひいては標準旅行業約款制度含めた商品造成のあり方を見直さなければ、新しいパートナーシップは生まれないと指摘。JTBの平野氏も「(見直しを)しなければ業界全体でパイを広げていくことは難しい」とし、JTBでも今後、あらゆる事業パートナーと新しい取引条件を考えていく必要があると語った。