海外旅行の回復は20代女性が牽引、今後の座席増に期待-JTBFシンポジウム

  • 2012年8月23日

▽震災後消費者マインドに変化、海外旅行は“投資”

 出国者増の要因について、黒須氏は震災後に消費者のマインドが変化した可能性を指摘する。具体的には、震災後に節約や節制の意識から生活全体を見直す中で、マインドが“モノ消費”から“経験消費”へとシフト。そして、自分への投資や自分の時間を大切にし、自己成長したいという意欲が高まった可能性があると分析する。こうした状況から「海外旅行を自分に対する投資として価値があるものだ」と再認識した消費者が旅行を消費先として選択する傾向が続いているという。

 この根拠として黒須氏は、観光庁による主要旅行会社の取扱額と、経済産業省と総務省による外食産業などの売上や家計消費のデータを元に、震災後の消費全般と旅行消費の動向を比較。震災直後の3月、4月は外食産業や小売業、家計消費が最大10%程度の落ち込みであったのに対して、旅行業取扱額は20%以上減少。しかし、8月以降になると外食産業、小売業、家計消費が前年並みで推移する中で、旅行業取扱額のみがプラスで推移し続けている。

 黒須氏は、こうした“投資”価値のある海外旅行という認識が広がっている可能性について、「消費としての旅行から、もう一度プライベートな体験としての旅を再発見しようという変化が背後にあるのでは」ともコメント。このほか、震災後に他人や社会に役に立ちたいという意識が強まり、ボランティアツアーや被災地での応援消費などに注目が集まったことも消費マインドの変化として指摘した。

 なお、若者の中には、一人旅を自分の価値観を変えて成長できる機会と捉える動きも出てきているという。