MICE事例に学ぶ(1):実施者の決め手と観光局の施策-香港社員旅行より

  • 2011年11月1日

香港は独自の文化体験が魅力
アクセスの良さも重要

ビルの隙間に昔ながらの露店の姿も  旅行委員の畑地温子氏によると、今回香港を選んだ理由は、東洋と西洋、新旧が入り混じった文化を体験することで「自分たちの人間の幅が広がる」という考えから。また、日本から約4時間という飛行時間も魅力だという。

 香港政府観光局(HKTB)MICE&クルーズ・ゼネラルマネージャーのギリー・ウォン氏も、アクセスの良さや東洋と西洋が融合した独特の文化、治安の良さが、香港での社員旅行や報奨旅行の開催地としての優位性だという。また、HKTBシニアマーケティングエグゼクティブ・東日本の古谷剛氏によると、10月30日には日本/香港間の震災による運休便は全て復旧し、さらに週14便が新たに就航と、直行便だけでも2011年11月現在で7空港から週175便となっており、国内各都市からのアクセスに加え、座席供給量も多いのもメリットとした。

 HKTBによると、2010年の1泊以上香港に滞在するMICE渡航者数は142万9941人。日本人の統計はないが、HKTBが実施している企業団体向けプログラム、香港バリュープラスキャンペーンの申込者を見ると、日本人は2万9465人だ。2011年1月から6月の累計では、全世界からは72万5779人が訪れた。日本市場の場合は、3月の東日本震災で一時、数が落ち込んだが5月以降から回復傾向となり、香港バリュープラスキャンペーンの申込者は1万1653人となった。渡航者数ベースでも、8月の日本人渡航者数は前年比1.6%増の11万8521人となり、震災後初の前年超えとなっている。


HKTBの企業団体向けプログラムも活用
参加者の満足度向上に奏功

HKTBマーケティングエグゼクティブ・西日本の笠井英巳子氏  HKTBでは10年以上前から香港バリュープラスキャンペーンを展開しており、桜十字グループも今回の社員旅行でキャンペーンを活用した。これは人数ごとにウェルカムメッセージやショーの提供といった特典を用意するもので、2010年度は651団体、3万986人が利用。2011年度は震災の影響を考慮し、今まで20名以上としていた対象人数を10名以上に変更した。

空港にあるHKTBのビジターセンター。このモニターに歓迎メッセージを掲載する  HKTBマーケティングエグゼクティブ・西日本の笠井英巳子氏によると、西日本市場の社員旅行・報奨旅行は、ここ数年は病院関係や製造業、自動車関係が多く、規模は20名から50名程度が平均だ。今回の桜十字グループの場合は震災以降に確定した企業団体旅行で最大規模の計600名の大型団体だったということもあり、特典を更に追加。香港国際空港内に2ヶ所ある、HKTBの大型プラズマテレビで企業名をのせた歓迎メッセージを掲載するとともに、15分程度のカンフーショーも提供した。ショーは香港ディズニーランド・ホテルでサプライズイベントとして実施したが、畑地氏によると、日本ではなかなか見ることができないショーであるため、写真をとって楽しんだり、参加者がカンフーを体験する場面もあり、盛り上がったという。

 さらに、本来は700名以上のグループを対象にする、歓迎バナー付ジャンク船の周遊も行なった。VIPが含まれるグループが訪問した際、病院名を帆に載せたジャンク船を2時間、ビクトリア湾内を周遊させた。ちょうど社員旅行参加者が自由行動中の時間に実施した試みだったが、VIPが記念撮影をする海沿いのアベニュー・オブ・スターズから見学できるように時間を調整したという。