itt TOKYO2024

入社式で社長訓示、大震災と旅行業の転換期−新たな出発へ若い力に期待

  • 2011年4月4日
 4月1日、旅行大手各社の2011年度入社式が実施された。各社社長は訓示の冒頭、東日本大震災の被災者への哀悼の意を表明。さらに、旅行業のビジネスモデルの転換期であることに触れ、この難関を乗り切るため、新入社員の若い力への期待を語り、新たな発展へともに努力していくことを呼びかけた。各社トップの訓示は下記の通り。(訓示を発表した会社のみ。50音順)


エイチ・アイ・エス(HIS)

 HISには全国で299名が入社。代表取締役社長の平林朗氏は、2011年を「大震災に見舞われただけでなく、新たな日本の出発の年」とし、新入社員に対して「皆さんはこの国の復興と一緒に歩み成長していく、復興を支える若い力となる。今後の日本の姿を世界中が見ている」と激励。その上で「HISグループとしては日本を代表する旅行会社として、我々の業務で復興支援につながることは何かを考え行動し続けていく。私たちにできる一番の社会貢献は、一日も早く被災地の方々、そして日本の皆さんが明るさと元気さを取り戻し、心からご旅行を楽しんでいただける環境を作ること」と最大限の努力を払う覚悟を語り、その際に「皆さんの若い行動力、新鮮で柔軟な発想力が大きな力を発揮してくれる」と期待を示した。


近畿日本ツーリスト(KNT)

 KNTでは80名の新入社員が参加。代表取締役社長の吉川勝久氏は、「創業以来、幾多の困難や試練に直面してきたが、そのたびに不撓不屈の精神と努力で克服してきた。今回の事態も社員一丸となって乗り越えられるものと確信している」と語った。また、旅行産業が大きな転換点を迎えていることにも触れ、今後、新たに力を入れる「個人旅行のウェブ販売」「訪日外国人旅行」「スポーツビジネス」の3点を説明。21世紀における政策の柱である観光の日本経済における重要性を示し、旅行業界のリーディングカンパニーの一つとして業界の先頭に立って中心的な役割を担う自負を示した。最後に「こういう時こそ、新入社員の持つ新しい『感覚』での、新しいチャレンジ、新しいアイディア、そして若い、元気な行動力に期待したい」と締めくくった。


トップツアー

 トップツアーには58名が入社。代表取締役社長の石川邦大氏はトップツアーの一員として共有してもらいたいこととして「次の時代にもお客様に選ばれる旅行会社となること」と説明。そのために『顧客満足度No.1』の企業をめざして実践していくための「クレド」を全社員が共有していることを紹介し、「これを一日も早く自分のものとして私たちと一緒に共有してほしい」と語った。また、「皆さんの仕事は旅行を通してお客様に喜んでいただくこと、満足していただくこと」とし、「旅行を受注しただけ、申し込みを受けただけで終わるのではなく、そこから始まる。そして実際に旅行に行ったお客様に満足していただき、無事にご自宅に帰っていただくまでが私たちの仕事、きちんと責任を持って業務に取り組んでほしい」と語った。


日本旅行

 日本旅行の新入社員採用数は22名。代表取締役社長の丸尾和明氏は、「危機的状況の中に入社された訳だが、決して憶することなくしっかりと研修し、基本を身につけ、実力を発揮していただきたい」と語った。また、旅行業界の環境・構造変化と変革の必要性に触れ、「そのベースとなるのは常に『お客様』。皆さんはこれまで自身がお客様だった訳ですから、その経験を生かし、お客様目線に立ち、お客様のニーズは何か、それを実現するためにはどうすべきか考え、行動してもらいたい」と期待を示した。最後に、新入社員に「厳しいなかでの社会人としてのスタートとなる」が、「力を合わせて全力を尽くせば、この難関を必ずや乗り切ることができ、新たな活力のある日本旅行を作り上げることができる」と、呼びかけた。


阪急交通社

 阪急交通社には34名の新入社員が入社。代表取締役社長の生井一郎氏は東日本大震災の日本や世界経済への影響の広範さとともに、旅行業界も打撃を受けていることを説明。「幾多の困難や苦労があると思うが、悲観的にならずに、大いなるビジネスチャンスを生み出すことになると思ってほしい」と語った。また「当社にはメディア販売を開拓してきた歴史・伝統力そしてノウハウがあり、それをスピードを持って実行してきた素晴らしいスタッフがたくさんいる」と説明。「このような土台で新しい発想や視点を持ち、失敗を恐れず、大いに仕事に挑戦してほしい」と、語りかけた。また、「いつも時代を読む感覚を持ち続けてほしい」「常に『お客様目線』と同じ目線で物事を捉える事を習慣化してほしい」との2点をアドバイスした。


▽日系航空会社
ANAグループ

 全日空(NH)代表取締役社長の伊東信一郎氏は、「未曾有の災害を受け、航空という公共交通を担う誇りや責任感のもと、オペレーションをおこなっている」と現状について触れ、「まさに、私達にしかできない使命を果たしており、皆さんにも一日も早く戦力となって、今後の復興や広く日本のために活躍してもらいたい」と挨拶。「今回の大震災により日本経済全体が厳しい時代を迎えるだろう。しかし、落ち込んでいても何も状況はかわらない。まずは、被災地の復興に全力をあげるとともに、今後日本が復興を遂げていく中で、いかに勝ち残っていくかという、戦いに挑まなければならない」と訴える。「危機において一致団結できることがANAグループのDNAであり強み。グループ皆で難局を乗り越え未来を創っていく。皆さんには、若々しいバイタリティで、その原動力なっていただきたい」と期待を寄せた。