地元密着・分散と集中に舵切り船出 近畿日本ツーリスト関西・三田周作社長(4)

  • 2017年10月18日

 ―リアルだからこそ、人育てに取り組めと。

 城山三郎さんの小説「臨3311に乗れ」に描かれた弊社創業者の馬場勇が「1日四度飯を食え」と言っています。朝昼晩の三食にプラス本という飯です。私も感銘を受け、今も社員に「本を読め、映画を観ろ、旅に出ろ」と、この3つを常に伝えています。

 社内のイントラネットに、社員が感動した本や映画を紹介しています。そうして勧められた本を読むと、その人の感動ポイントが分かる。この人はこういう本を見て泣くのか、こういう映画が好きなんだと分かるわけです。同じ映画がお互いに好きなことがわかるとシンパシーを感じ、親しくなれるんです。本や映画は人と人とがつながるきっかけになり、自分なりに深く思索することができるようにもなります。

 ―ユニークな研修もやられているそうですね。

 フレッシュマンキャンプと言って、1年目、2年目、3年目とバトンを渡すような研修です。今年は徳島県の西阿波に1泊2日で行ってラフティングを皆でやりました。肥えぐろづくり体験など地元の貴重な農業遺産も体験させてもらいました。インターネットだけで得られる形式知ではなく身体を使い動かす「身体知」を大切にしたい思いからです。そして一過性ではなく1年目から2年目になって、どんな姿になっているかを確かめる。3年目は運動会の企画などを担当させるようにしています。身体を動かして我々の事業領域であるイベントであったり、地域創生のやり方を実体験を通じて身体知として得ていくわけです。

 職場旅行もかつては福利厚生の視点でしたが、今や経営者にとっては人材への投資です。セクショナリズムやジェネレーションギャップを埋め、社内の活性化が進みより利益の生まれる体制にするような流れを感じますね。身体を動かす泥臭い研修も今の時代だからこそ大事なんですね。

 社内報に管理職の失敗談を載せています。実は支店長や部長も若いころはたくさん失敗しているんだぞ、と社員に知らせるためです。やはり不易流行の中で、変わっていくもの変わらないもの、それを見極めるのは難しいですが、トライ&エラーが生まれる組織風土づくり、新しいコトにはどんどんトライしていかなければなりませんから。

 三田さんは聞き上手でもある。お話の後半は私が質問攻めにされ、家族構成などを答えさせられてしまった。団体営業をされていたということで、こうしてコミュニケーションを図り、お客との関係性を高めていったのだろうなと容易に推測させた。本文の通り要所では「ランドセルから終活まで」「シートベルト付き海外旅行」などメッセージ性の高いキャッチコピーがどんどん出てくる。それは三田さんの「編集力」。

 新会社の売上目標や戦略などは今回尋ねなかった。近ツー関西の経営資源を「編集」する手腕を発揮され、新しい旅行会社像を見せてくれると思う。次の機会に、その成果をお聞かせいただこう。

 三田周作(みた・しゅうさく)さん
近畿日本ツーリスト関西代表取締役社長。立命館大学卒業後、1988年近畿日本ツーリスト入社、2011年団体旅行事業本部カンパニー中国四国営業本部本部長、12年近畿日本ツーリスト中国四国代表取締役社長。16年近畿日本ツーリスト執行役員関西営業本部長を経て、今年6月から現職。1965年10月3日生まれ、52歳。愛媛県出身。


情報提供:トラベルニュース社