目的に沿ったデジタル化で業績アップへ-JATA経営フォーラム

  • 2021年4月1日

デジタル化はあくまでも「手段」
自社の進むべき方向に適した対策を

IT人材の内製化で他社と差別化

HISのCIOで本社情報システム本部本部長を務める加堂直行氏

 続いてHISのCIOで本社情報システム本部本部長を務める加堂直行氏が、「IT人材の内製化」をテーマにプレゼンテーションを実施した。HISがIT人材の内製化に至った経緯は、2010年代に旅行業界でIT企業が台頭したことがきっかけ。「IT企業についていくため、IT企業と同じようにHISでも内製化しよう」と考えてプロジェクトを立ち上げ、エンジニアを雇ってシステム開発を進めたが、うまくいかなかったという。

 加堂氏は「IT企業はしっかりした戦略的なアーキテクチャーを組んでシステムを開発しているが、HISはいろいろな会社に開発を委託しており、連携に時間がかかっていた」ことを一因として説明。分析を進めるうちに、ベースとなる開発手法や工程などをまとめた「開発標準」とシステムの構造を自社で管理する必要があることがわかり、プロジェクトを再始動したという。同氏は「今後IT人材の内製化を検討する会社は、デジタルマーケティングの専門家やプロジェクトの請負人を欲しがると思うが、まずは柱となるエンジニアを雇い、開発標準とアーキテクチャーを内製すべき」と訴えた。

 また、加堂氏は中小企業でトップダウンでプロジェクトが進む場合は別として、大企業や経営者の時間的余裕が限られている場合は内製化の結果が出るまで時間がかかることを説明。「短期間で根底からシステムを作り変えられないので、いかに(経営陣から)時間的な猶予をもらうかがポイント」と話した。同氏は例として、HISで課題となっていた既存システムの改修コストを挙げ、「古くなったシステムを改修しても得られる利益はそれほどなく、改修を止めても売り上げは落ちない。何億円というコストが削減できることを内製化への一つの中間的な成果として経営陣に説明し、プロジェクトを続けさせてもらう時間をもらった」と振り返った。

 また、同氏は「エンジニアはコミュニケーションが苦手といわれているが、彼らには独自の世界観がある」と説明。「旅行会社の多くは営業会社的なところなので、エンジニアの文化と相いれないところがある」と指摘し、既存のスタッフとエンジニアとの間に軋轢が生じないよう、エンジニアをサポートすることが重要であるとした。

 このほか、同氏はDX推進についても言及。「DX推進はIoTやデジタル施策をたくさん実施するのではなく、施策を戦略的に展開できるような会社の体質に作り変えること」と話し、システムの構造管理を内製化することで、自社の強みを発揮して他社との差別化につなげることができると話した。