itt TOKYO2024

【コロナに負けず】エアプラス代表取締役社長の岡田健氏

収束後のキーワードは「健康・安全・衛生」
人間同士の信頼関係も見直す時代に

-今年は少なくとも、前半のうちは厳しい状況が続くと思われますが、7月から12月までの後半で日本人の海外旅行はどの程度回復すると思いますか

岡田氏(2019年4月に撮影)岡田 ある程度はポジティブに見ている。というのも3月に日本が水際対策の強化を発表した途端に、海外在住の日本人と日本在住の外国人の、母国への帰国のための需要が増えた。この動きを見ると、中国、台湾、韓国については生活路線としてのボリュームがあると見えたので、空港さえ開き始めれば、6月頃からそれなりの需要は見込めるのではないかと思う。

 ただ、これらの方面の単価は安いので、売り上げが大きく伸びることはないだろう。欧米については、上期は回復を見込めない。本格的に数字が動き始めるのは下期以降ではないか。

-日本人出国者数は2019年に2000万人を超えました。COVID-19が終息した後、その数字を上回ることはあるとお考えですか

岡田 今後5年間くらいは、19年の記録を上回ることは見込めないのではないか。ポストコロナ時代に、旅行業界が顧客からしっかりと受け止めなければならないニーズは「健康・安全・衛生」の3つになるだろう。どの旅行会社も航空会社もホテルも、この3つを果たしていかなければ、人は動かないのではないか。

 国内旅行については比較的安全と考える人は多いと思うので、事態が一旦収束した後は急激に回復すると思う。来年に東京五輪が開催されれば、さらに拍車がかかるだろう。しかし海外旅行については、特にレジャーは「健康・安全・衛生」が確約されなければ、なかなか行きづらくなる。業務渡航もビデオ会議などの利便性や有用性が広く認知され始めているので、必要性が低下していくのではないか。

-現在、日本では8000社から9000社くらいの旅行会社が活動していると見られていますが、ポストコロナ時代にはどのような旅行会社が生き残ることができると思いますか

岡田 個人的には、人と人によるコミュニケーションで安全を確認する意識が強くなり、店舗の価値が見直される流れが生まれてくると考えている。そうなるとむしろ小規模な旅行会社の方が、担当者の顔が見える分、安心して頼みやすいといったケースが生まれる。「商品を買う」という感覚よりは「相談する」という感覚が強くなるのではないか。一方で中堅以上の、組織として仕事をしている感覚が強い旅行会社は、顧客とのコミュニケーションをうまく築くことができなければ、そのことがリスクになるかもしれない。

 日本の旅行会社は、すべての機能を自前で持ちたがるところがある。しかし今後は、自分たちができる領域をしっかりと把握して磨き上げ、一方で不要な部分を削ってシェイプアップし、その上で他社と協力して必要な機能をシェアしあうことが必要だと思う。

 また、働き方についても変化が生まれるだろう。現在弊社では、原則として全員が在宅勤務を続けているが、電話対応以外ではオペレーションに特段の問題はない。このような働き方によって固定費を下げることができるのであれば、中長期的には今とは異なる勤務形態も可能となる。ぜひ、提携先の旅行会社様にもお勧めしようと考えている。