itt TOKYO2024

事業承継の成功例を知る:大阪市・第3種旅行業のジータック

自社社員によるスムーズな承継に成功
飛行機クラブ仲間から仕事仲間、そして後継者へ

-原会長は、なぜ親族や外部に後継者を求めなかったのでしょうか

原氏 私に子供がいないこともあるが、自分も税理士だった父親の仕事を継がなかった。だからもし子供がいても、単純に「跡継ぎにしよう」とは考えないと思う。

 もちろん外部にも目を向けたが、この業界の仕組みは独特なので、旅行業の経験がある人か、業界を分かっている人でなければ後継者は務まらない。だから「社長としての器」があるだけの人では、事業承継はできないと考えていた。

-事業承継において最も難しかったのはどんなことでしたか

 やはりお金の問題が大きい。我々は業務渡航の手配が多く、立替金が大きくなるケースがあるので、経済的にそう余裕があるわけではない。しかしそういった状況を丸ごと河村社長に背負わせるのはさすがに忍びないので、当面は銀行での借り入れに際しては前社長の私も連帯保証人になり、そのほか自分の資産を必要に応じて会社に貸し付けるなどして、協力を続けることにした。

-河村社長にとって難しかったことは

河村 やはり資金繰りに関することです。実務に関してはしっかりと分かっていても、今後は資金繰りをどうすべきか、経営をどう進めていくべきかといったことを熟慮しなければならない立場になり、焦りを覚えました。

 そのような不安を取り除くために、公益財団法人の大阪市都市型産業振興センターが運営する「大阪産業創造館」が主催している「なにわあきんど塾」で経営のノウハウを学びました。大阪の中小企業を支援するための、若手経営者や事業の後継者を対象とした育成プログラムを受けることで、目の前の霧がある程度クリアになっていったと思います。

-原会長は現在、どのように会社に関わっていらっしゃいますか

 自由にさせてもらっていて「ハーフリタイア」の状態といえる。経理関係の処理があるので月末には出社するが、好きな時に休みを取って、海外旅行を楽しんだりしている。経営に関しては相談されれば話を聞くが、基本的には一切口を出さない。河村社長とは一緒にいた時間が長いし、会社の方向性が大きく変わることはないので、細かな部分については社長の考えで進めて問題ないと思っている。