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トップインタビュー: DeNAトラベル代表取締役社長の大見周平氏

ウェブ企業の強みを生かしてユーザーを「ファン化」
主力の航空券販売を強化、新技術を積極的に活用

-近年はグーグルやアマゾンなども旅行ビジネスを模索しています

 大見 グーグルが旅行の販売を始めると、旅行会社としては大きなリスクとなるだろう。ただ、旅行会社はかなりの販促費をグーグルに支払っているので、果たしてグーグルがそれをすべて諦めて、自社での旅行販売で利益を上げていくかは疑問だ。グーグルとしては広告費で稼ぐ方が良いのではないか。ただし、「Google Home」や「Amazon Echo」などスマートスピーカーの領域においては、広告モデルは変化していくと思うので、状況は変わるかもしれない。

 アマゾンについては、たとえばアマゾンプライム会員を増やすための商品として旅行業に参入してくる可能性はあるが、旅行は毎日買うものではないので、果たしてメリットがあるだろうか。ただ、参入すれば力はあるのでゲームチェンジするだろう。


-6月に住宅宿泊事業法が施行されますが、民泊サービスについての取り組みをお聞かせください

大見 ユーザーにとって馴染みのあるサービスになりつつあるので、基本的には取り組むべき領域だろう。ただ、現在の民泊ユーザーは、体験の特別感を重視している層が中心。その層を我々が取り込む必要があるのかどうかは考えるべきだろう。すでに民泊物件を多く扱うBooking.comとシステム連携しているので、ある程度カバーすることはできている。

 訪日向けの民泊サービスの提供については、その国の市場で検索したときに我々の名前が上位に出てくる必要がある。現在、韓国、シンガポール、オーストラリア、台湾などで事業を展開しているが、まだまだ存在感は高くないのが現状だ。


-昨年のてるみくらぶの経営破綻により、改めて旅行会社の信用が問われていますが、貴社のお考えをお聞かせください

大見 旅行業は収入と支出の動きが激しいので、経営管理は難しい。ユーザーが旅行会社の資本力や経営状況を見るリテラシーと、公的機関が経営の健全性を監視する仕組みがなければ、今後もてるみくらぶのようなケースは起こり得るのではないか。日本旅行業協会(JATA)などと連携しながら、信頼を高めていくために自助努力したい。オンラインでもリアルと変わらない安心安全の旅行を提供していくには、口コミと実績を積み重ねていくしかない。

 安心安全の旅行については、外務省のたびレジとの連携を進めている。公的機関による情報は信頼度が高いので、旅行会社は積極的にユーザーに伝えていくべきだろう。


-現在の旅行業界の課題はどこにあるとお考えですか

大見 海外のOTAが事業を拡大するなか、テクノロジーをベースに、どのようにユーザーのニーズに向き合ったサービスを開発していくかだと思う。旅行業は参入障壁がそれほど高くない業態なので、10年、20年後に日本の旅行会社であることの意味が問われるかもしれない。

 グローバルで見ると、旅行業の発展が遅い地域ではプライスラインとエクスペディアによる寡占化が進んでいるが、日本は成熟しているので極端には寡占化しないだろうし、リアルエージェントもなくなることはないと思う。富裕層向けや専門性の高い旅行会社など、コンシェルジュサービスが強いところは需要を伸ばすだろう。

 DeNAトラベルはガラパゴス化するのではなく、テクノロジーを使って国民的サービスを提供していく存在になる。また、現在では日本からのアウトバウンドが中心だか、そのサービスを将来的にはグローバルに展開していきたい。DeNA本体との連携も、機が熟したら積極的に進めていきたいと思っている。


-ありがとうございました