オーストリア / オーストリアのクリスマス

  • 2017年12月22日

 クリスマスまでの子供たちの行事、聖ニコラウスとクランプス、美しい独自のクリスマス切手を発行しているクリスマス郵便局、オーストリアのクリスマスイヴの過ごし方等をご紹介。

 クリスマス時期は冬のハイライトの一つです。

  ■ アドヴェント(待降節)
クリスマスの準備期間、待降節になると、アドヴェントクランツ(リース)を手に入れることです。田舎では祖父母が自分の手で作っています。モミの小枝を縛って輪にし、紫や金色のリポンで結び、4本のリーソクを立てて、テーブルの上に置いたり、スタンドに掛けたりします。

 待降節(クリスマスの前の4週間)の最初の日曜に一本目のローソクに火をともし、二週間目には二本、三週間目には三本、最後のクリスマスの週には四本すべてに火が点されます。

 子供たちの興奮と期待はローソクの数とともに高まっていきます。

クリスマスの一か月ほど前から、各地の主要な広場では、クリスマスツリーとイルミネーションで飾られたクリスマス市が開かれます。人々は、ここでクリスマスのプレゼントを探したり、家でクリスマスの前に飾るクリスマスツリーのオーナメントを買ったりします。

 もちろん、市の屋台には暖かいポンチや、グリューワイン、ソーセージやスナックなど美味しいものもいっぱいです。

  ■ 聖ニコラウスとクランプス
各地で行われるクリスマスまでのもう一つの行事は、12月6日の聖ニコラウスの日の前夜5日に行われる「クランプスの祭り」です。宗教的なつながりはないものの、子供たちにとってはクリスマスへのステップとなります。

 聖ニコラウスは鬼のクランプスと一緒に、各家庭を訪ね、良い子たちに小さなプレゼントを持ってきます。また、悪い子にはクランプスに任せて罰を与えてもらうのです。

 ニコラウスは白い髭を伸ばしたやさしいおじいさんで、司教のような金色の帽子をかぶり、白い服装をしています。彼は最初に金色の本を開き、子供たちの一年間の行いを調べ、その良し悪しによってプレゼントを配ります。

 クランプスは地獄からくる鬼で、身体は毛に覆われ、頭には大きな角があり、長い赤い舌、尾っぽ、馬のような足が特徴です。彼は、鞭と鎖を持ち、その鎖で大きな音をたてながら、子供たちを怖がらせ、二度と悪いことをしないと約束させます。

 街をたくさんのクランプスが脅かしながら暴れる姿には、子供たちばかりか大人たちも震え上がります。しかし、そのあとは聖ニコラウスがやさしく子供たちを笑顔で包み込みます。

 ザルツブルクやバード・ミッテルンドルフなどで行列が見られます。

  ■ シュタイヤーのクリストキンドル郵便局
クリスマス前に臨時開設される特別郵便局は世界中にたくさんあり、特定の時期に手紙やはがきを送ると、クリスマス用の特別なスタンプを押してもらうことができます。

 例えばフィンランドには、「ロバニエミ」という特別郵便局があり、サンタクロースのスタンプを押してもらえることで知られています。

オーストリアにも、美しい独自のクリスマス切手を発行しているシュタイヤー(Steyr)のクリスマス郵便局があり、大変な人気で、毎年世界各国から送られる大量のクリスマスポストを処理しています。

 開設された1950年には、一人の局員が42,000通の手紙やカードに、クリスマス郵便局の特別スタンプを押しました。その後、郵便物は年々増加し、近年には200万通を超える数字を記録しています。

それでは、世界各国の人々に親しまれているシュタイヤーの「クリストキンドル・クリスマス特別郵便局」についてご紹介いたしましょう。

 オーバーエーステライヒ州の古都・シュタイヤーには、このクリスマス特別郵便局が置かれているクリストキンドルと呼ばれる町があります。「クリストキント=幼いキリスト」という意味の地名がなぜつけられたのか、その由来をたどってみましょう。

人々が今よりずっと信仰心の厚かった17世紀の頃、シュタイヤーの町に指揮者で消防士のフェルディナンド・セントルという人物が住んでいました。彼は持病のてんかんの発作に苦しみ、人里離れた小さな森の中で暮らしていました。セントルはとても信仰深い人で、トウヒの木の幹に聖家族の絵をとりつけ、その前でいつも礼拝を行ない、健康の回復を願って一心に祈りました。そうして1695年ごろ、彼はシュタイヤー修道院のシスターから鑞でできた幼いキリストの像を買い、それをトウヒの木の中に納めたのです。

 その時から、セントルは毎週その木の元で礼拝を行い、自分が行けない時には妻をかわりに行かせました。すると不思議なことに、てんかんの発作の回数が次第に減り、ついにはまったく発作が起らなくなったのです。この出来事は、まもなく周辺のあらゆる人々に知られることとなり、多くの人々が、この聖像を拝みにくるようになりました。そして、1699年にこのトウヒの木の回りに木造の礼拝堂が建てられたのです。

ますます多くの人々が、この「クリストキント」の像を拝みにくるのを見ていたガルステンの大修道院長は、そこに教会を建てる必要があることをパッサウの司教に申し出、1708年4月16日、教会建築の許可が下り、5月31日に教会の礎石が厳かに設置されました。

 建設に着手したのはカルロ・アントニオ・カルロネ、あるいは彼の弟ジョヴァンニ・バティスタ・カルロネであるといわれています。そして、オーストリアのバロック建築家として名高いヤコブ・プランタウアー(メルクの修道院が代表作)が、この教会を完成し、司祭館を建築しました。

 今日では、祭壇のまん中にかつてのトウヒの木が置かれ、その後ろに雲の間を飛び回る美しい天使の絵がかけられています。祭壇の聖櫃は地球をかたどり、それぞれの大陸が浮き彫りになっています。

そして、たくさんの人々が礼拝に訪れるこの地に、1950年、クリスマス特別郵便局「ゾンダーポストアムト・クリストキンドル」が開設されたのです。

 この特別郵便局のスタンプをご希望の方は、住所と氏名(自分または他の受取人)を書いたカードや手紙に、国際返信切手券2枚(1枚150円・郵便局で発売)を添えて、下記へお送りください。特別スタンプが押され、宛先へ届けられます。〔送付先〕

* Sonderpostamt Christkindl住所: A-4411 Steyr, Austria/Europe

※開局期間: 2017年11月29日~2018年1月06日

※ウェブサイト: http://www.christkindl.at/
■ オーストリアのクリスマスイヴ(聖夜)
いよいよ大人も子供も嬉しいクリスマスイブ・・・午後になると、父親は子供を誘って、雪の積もった公園の散歩や人形劇、色々な町のイベントに出かけます。その留守に母親たちは2メートル余もあるクリスマスツリーに、買ったり自分で作った藁の星やラメの飾り物、折り紙やキャンデーを飾り付け、最後にローソクを吊し、プレゼレントをツリーの下に並べます。

子供たちが帰ってくるとイブの夕食が始まります。普段は口にすることのない鯉や七面鳥が食卓に並び、デザートは子供たちも手伝って焼き上げたクリスマスクッキーです。

 食後、父親はそっと席を立ってツリーのある部屋に。ローソクに火を点し、電気を消して、いまクリストキントが帰ったことを知らせます。駆け付ける子供。子供たちの輝いた瞳に映る清らかなローソクの明かりに浮かぶツリー。そして待ちに待ったプレゼント。

 一家揃ってクリスマスキャロルを歌うなか、それぞれにプレゼントが配られ、イブのクライマックスを迎えます。疲れてうとうとと眠りについた小さな子は床につけ、大人や大きな子供たちは、深夜のクリスマス・ミサに出かけます。

12月25日は、キリストの生誕を祝うために教会へ行き、午後は親戚や親しい友人宅を訪ねたり、一家でのんびりと団らんを楽しむのが、オーストリアのクリスマスです。

情報提供:オーストリア政府観光局、日本海外ツアーオペレーター協会