「真の女性活躍」で業界を発展-JATA経営フォーラム

女性社員と「イクボス」が意見交換
短時間勤務は周知と「覚悟」が重要

JTB首都圏本社総務人事チームリーダーの井戸原梨香氏  続いて、現場で働く各世代の女性と、育児休職者や短時間勤務者を部下に持つ「イクボス」による意見交換がおこなわれた。20代を代表して登壇したJTB首都圏本社総務人事チームリーダーの井戸原梨香氏は、同チームに着任した2年前まではダイバーシティや女性の出産後の働き方に関して考えたことがなかったと話した。育児休職や、出産後の短時間勤務については周囲からの理解が不十分なことで当事者が孤立してしまう可能性があるとし、「職場の人間関係を良好に保つためにも、本人だけでなく周囲の社員への制度の周知徹底や理解の促進が必要」と強調した。

 井戸原氏は周知徹底に向け、全社員を対象に育児休職や短時間勤務に関する研修などを開催することを提案。「身近なところに女性管理職や育児休職者がいないことは、理解や関心の低さにつながる」と述べた。

日新航空サービス管理人事総務課課長の鈴木希氏  30代を代表して登壇した日新航空サービス管理人事総務課係長の鈴木希氏は、自身の周りにも結婚や出産を機に退職する女性社員が多いことを説明。「産休や育休、短時間勤務などの制度がより整備されていたら、退職しないですんだのではないかと感じることがある」と指摘したほか、「現状では短時間勤務をした場合、通常の長時間勤務をしている社員から反発が起こり、水面下でわだかまりができてしまう可能性がある」と懸念を示した。

 これらの問題に対して鈴木氏は、2人1組で仕事を共有する「ダブルキャスト制度」を提案。同制度を採用することで、仕事の「見える化」を進めてそれぞれの仕事をシェアすることができ、長時間勤務を減少させることが可能となるほか、短時間勤務にも対応しやすくなると説明した。

近畿日本ツーリスト個人旅行首都圏営業本部課長代理の山崎里江氏  40代を代表して登壇したのは、自身も10歳と6歳の子供を持つ近畿日本ツーリスト個人旅行首都圏営業本部課長代理の山崎里江氏。山崎氏は、同社では短時間勤務ができるのは小学校3年生までの子供を持つ親に限られるため「子供が小学校4年生から6年生までの間に、どのように働くかが最大の課題」と語った。

 育児休職明けの復帰に関しては「自分がどのような職場に復帰するか、誰でも不安になると思う」とコメント。そうならないためには「若い頃からさまざまな職種を経験し、自身のスキルの幅を広げておくべき」とし、周到な準備をしておくことで「復帰する際にどこに行っても『経験もスキルもあるから大丈夫』という自信につながる」と説明した。

日本旅行国際旅行事業部海外営業部マネージャーの竹田哲也氏  一方、育児休職者や短時間勤務者を部下に持つ「イクボス」として登壇した日本旅行国際旅行事業部海外営業部マネージャーの竹田哲也氏は、10年ほど前に自身も短時間勤務を経験した旨を説明。当時は男性の短時間勤務については前例がなかったため「上司に『権利だから仕方がないが、お前の出世はない』とはっきり言われた」と話し、「そのおかげで『絶対に見返してやろう』と思った」と説明した。

 竹田氏は育児中の仕事の問題点として、子供が病気になった際など、突発的に休みが必要になることを挙げ、1週間に1回の在宅勤務など、短時間勤務者をサポートできるフレキシブルな制度が必要と語った。一方で、育児休職や短時間勤務をする本人にも「頑張りと覚悟」が必要になることを強調した。