「RYOKAN」をインバウンド強化の推進力に-国政研シンポ

受入側だけが戸惑う「言葉の壁」
飛び越えて「RYOKAN」ブランド構築を

 国土交通省のシンクタンクである国土交通政策研究所(国政研)は7月22日、同研究所や全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連)青年部、三菱総合研究所、有識者などで構成する「旅館ブランド研究会」によるシンポジウム「インバウンド観光の推進に向け、『RYOKAN』を世界に発信」を開催。産官学を代表する識者が、日本固有の宿泊形態である旅館のブランド構築や、外国人旅行者への効果的な情報の発信などについて、プレゼンテーションやパネルディスカッションをおこなった。


言葉の壁による敬遠は「論外」

全旅連青年部部長の山口敦史氏 冒頭で挨拶をおこなった全旅連青年部部長の山口敦史氏は、昨年9月に旅館ブランド研究会を設立した理由を、「インバウンドはこれからの日本の観光産業にとって不可欠。推進していくための1つの手段として、旅館を世界に発信していくことが重要と考えた」と説明。同研究会では旅館経営者や旅館に宿泊した外国人旅行者にアンケートを実施するとともに、11回の会合を重ねて、「旅館とは何なのか、ということをどのように再認識し、どのようにブランド化して発信していくべきか」について検討を進めたと報告した。

全旅連青年部インバウンド戦略委員会副委員長の小林秀顕氏(左)と倉沢晴之介氏 全旅連青年部インバウンド戦略委員会副委員長の小林秀顕氏と倉沢晴之介氏は、「勘違いだったかも!? インバウンド!!」と題した発表において、昨年12月から今年1月にかけて全国325施設の旅館経営者に対して実施したアンケート調査の結果を発表。約6割の宿泊施設が外国人の集客に向けた取り組みを「おこなっていない」と回答するとともに、その理由として、多くの回答者が「何をしていいかわからない」「対応ができない」といった声を挙げていたことを報告し、旅館にとっては言語の壁がインバウンド推進の大きな壁になっていると説明した。

 しかしその一方で、今年2月に旅館に宿泊した549人の外国人旅行者を対象に実施したアンケート調査では、欧米系の7割以上、アジア系の5割以上が、言語対応力が不十分な旅館においても従業員と「コミュニケーションが取れた」と回答。また、案内ツールによるサポートなどで、欧米系・アジア系ともに7割近くが「不自由を感じなかった」と述べ、旅館での宿泊に対する満足度も総じて高いことから、両氏は言語の問題は宿泊者にとっては大きな問題ではないとの見方を示し、言語の問題を理由にインバウンドを敬遠することは「論外」とした。

 両氏はこれから集客活動を始める旅館に対しては、宿泊施設の規模やターゲットにかかわらず、第一段階として自社ウェブサイトの作成と整備から始めることを提案。その際には温泉を好む傾向が強いアジア人、和の雰囲気を好む傾向が強い欧米人などの嗜好への配慮が必要になるとした。その後には最適な販売チャネルの選択に取り組むべきとし、規模やターゲットに合わせて、自社ウェブサイトや海外のOTA、自国の旅行会社などを活用することにより、無駄な営業や単なる在庫出しから早期に脱却すべきと提言した。

 なお、旅館経営者からの要望としては、海外のエージェントとの協力関係構築や海外での情報発信、関係省庁や国内エージェントとの連携、WiFiなどの通信インフラ整備、多言語対応のコールセンターや案内標識などの設置などを求める声が多かったとのこと。全旅連では今後、これらの課題に取り組みつつ「RYOKAN」ブランドを構築し、世界に打ち出していく方針を示した。