アクセスランキング、日本の空で進む変化、HIS航空会社も

[総評] 今週は、全日空(NH)が成田/仁川線の運航を休止する記事が1位になりました。2位、3位にはHISのチャーター専門航空会社の設立が入っており、こちらが上になるかと思っていましたが、いずれにしても、上位3位のニュースは今後の日本の空を占う上で重要な意味を持っているといって良いでしょう。

 まずNHですが、予想外とはいっても、韓国は日本の海外旅行市場で最大規模のシェアがあります。その韓国の最大の市場であるソウルへ、しかも成田からの路線を、さらにNHが運休するというのは確かに大きなニュースでしょう。NHでは休止について現状でも競争が激しいことに加え、LCCや今後のオープンスカイでさらに激化することなどを理由としています。

 興味深いのはLCCによる競争激化という点で、NHはエアアジア・ジャパン(JW)の設立という形でその原因の一端を担っているわけです。

 NHに限らず、ジェットスター・ジャパン(GK)に出資している日本航空(JL)も、フルサービスキャリア(FSC)である自社とLCCとではターゲットが根本的に異なるために深刻なカニバリゼーションは発生せず、むしろグループとしての取り扱いは増える、というスタンスですが、NHの今回の決定とこのスタンスには若干の隔たりを感じます。

 というのも、FSCとLCCとのターゲットの違いは年齢や性別、年収、可処分所得、低価格志向の度合いなどになるはずで、地理的なターゲットは路線ごとに異なるものです。つまり、地理的に成田の方が近いNHの顧客もいるはずであって、コードシェア便は残るとはいえ顧客側としては不便を感じるでしょう。

 もちろん、例えば成田に利便性を見出す地域に住んでいる層と都心部の層では可処分所得がこの程度異なるというような考え方もあり得るかもしれません。あるいは、短距離路線ではフルサービスのメリットを打ち出しにくいことも決断の理由かもしれません。こうした推察がどこまで的を射ているかわかりませんが、いずれにしても思い切った決断と思われます。

 一方、2位、3位のHISのニュースは、自社でチャーター専門の航空会社を保有し、日本に限らず各国市場のピーク期に合わせてチャーター便を設定していこうというものです。HISで航空会社というとスカイマーク(BC)を思い出してしまいますが、今回はチャーター専門ということで、トーマス・クックやTUIのような旅行会社がついに日本にもできるのかと、個人的にはNHのニュース以上に驚きました。

 自社の思い通りに座席をコントロールできることは、旅行会社にとっては非常に魅力的なメリットでしょう。もちろんその分リスクも大きいわけですが、旅行会社のプロフェッショナリズムという議論においても、“代理店“からの脱却という意味を持ちます。客室乗務員をどうするかなど決まっていないことも多いようですが、HISの新しい取り組みが旅行業界をどのように切り拓くか強い興味を覚えます。

 6位にブリティッシュ・エアウェイズ(BA)日本・韓国地区支社長のビシャール・シンハ氏のインタビューが入っていますが、シンハ氏はこの数年間で日本の旅行・航空業界で起きた変化を「劇的」と表現されました。

 NH、HISの記事はそうした変化のごく一部であり、おそらく今後も続くでしょうし、ますます大きくなっていくような予感もします。その中で自社がどのように事業を展開しているべきか真剣に考えておかなければ、あっという間に取り残されてしまうのではないかと危機感すら覚えるランキングになりました。(松本)


▽日刊トラベルビジョン、記事アクセスランキング
(2012年11月第5週、12月第1週:11月30日0時~12月7日17時)
第1位
全日空、成田/仁川線休止-「総合的に考慮」(12/12/03)

第2位
HIS、国際チャーター専門航空会社を設立-バンコク拠点(12/12/04)

第3位
HIS、チャーター子会社就航は来夏予定、まずは日本/バンコク(12/12/04)

第4位
全日空が60周年、更なる成長誓う-羽田国際線に期待も(12/12/01)

第5位
日系LCC、エアアジアは「国際線に軸足」、ジェットスターは国内線強化(12/12/03)

第6位
インタビュー:BA日本・韓国地区支社長のビシャール・シンハ氏(12/12/04)

第7位
年末年始の海外旅行、過去2番目の65.7万人予想、長距離が好調-JTB調査(12/12/05)

第8位
JTB中部、年末年始の海外旅行は6.7%増-タイ、米国の伸び率高く(12/12/06)

第9位
アミューズトラベル、廃業へ-観光庁は調査急ぐ(12/12/05)

第10位
ユナイテッド航空、NRT/HNL、KIX/SFO線に大型機導入、来夏から(12/12/05)