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回復の兆しと新たな脅威への対応-通訳案内士のインバウンド考・第7回

  • 2011年11月9日

「楽しむこと」が一番、訪日旅客の寛容性

修学旅行生に囲まれてしまいました  さて、震災後に日本に旅行に来られたお客様は、地震、津波、原発に関するセンセーショナルな報道を自国で見聞きしているはずなのに、日本国内を旅することに不安はないのでしょうか。震災後にガイドをするまで、私としてはお客様が放射能の影響を恐がったりするのではないかと非常に心配していました。自分自身、どの程度気をつけたらいいのかがはっきりとわからない状態なので、なおのことです。

 しかし、私の心配をよそに、お客様は震災での東北の被害を深く悲しみ、同情こそすれ、「放射能が怖いから」を理由に特定の観光や食事を拒むことをいう方はいませんでした。強いていえば今の復興状況や福島から今いる場所の距離を聞かれることがある程度です。むしろ、あまりにお客様があっけらかんとしているので、あえてこちらから日本への旅行は怖くなかったのか聞いてみたところ「気にならなかった。ニュースは過熱報道気味だったのではないか」と一蹴。不安な方はそもそも来ないでしょうが、来られた方は事態を冷静に判断し、来たからには思いっきり楽しもうという姿勢でいるようでした。

 ちなみに、先述の5月のお客様は「原発問題が騒がれる今だからこそ京都が空いていて快適な旅行ができた」という自国での新聞記事を見て、ゆったり旅行するチャンスだと思って来日したそうです。ただし、実際に一緒に京都、奈良をまわってみたところ京都は修学旅行生でいっぱい!一気に外国人旅行者が少なくなった分、私のお連れしたイギリス人のお客様が目立ってしまい、修学旅行生に度々声をかけられ、ゆったり…とはほど遠い旅行になってしまいました。