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業界トップが語る「震災、現在、未来」-JATAシンポジウムから

  • 2011年10月5日

「崖っぷち」からの生存策

JATA会長の金井耿氏

 所得格差の拡大や、震災による消費者の生活の変化とそれによる旅行スタイルの転換など構造的な変化に、旅行業界はどう対応すべきか。そもそも旅行会社は、消費者ニーズの変化、団体から個人、個人からFITへの推移、サプライヤーの直販化、ゼロコミッション、ネット販売と店舗営業との関係など、諸課題に直面しているが、金井氏は「これらへの対応の遅れを否定できない」と率直に認める。すでに旅行業界は「崖っぷち」に立っており、左右どちらかに道を見出さなければならないとの認識だ。

 その上で金井氏は、こうした環境下でも成長を続けている企業もあると指摘し、「業界共通の解はない。自ら答えを出していくということを必死にやっていかなければならない」と訴える。それによって「社会的、経済的機能としての旅行会社の再確立」をすべきであり、そのためには「我々を使うことに価値を見出してもらう」ことが前提となるという。


人材育成で価値提供を

 旅行会社の価値とは何か。金井氏は、「目的としての海外旅行から手段としての海外旅行に」変化している今、「ただ旅を組み立てるのではなく、旅をプロデュースする」こと、「旅行のプロ」であることこそが取り組むべきポイントだと強調する。

 しかし、「作れば売れる時代」が同業間競争であったとすれば、現在はインターネットなどによって大量の情報が流通し、「“消費者と業者間の競争”も出てきている」ところ。「旅行会社はプロであり、プロとアマチュアが競争するなんてことはあってはいけない」のだが、実際には後塵を拝してしまっている。

 「旅行のプロ」であるために必要なこと。金井氏の提案はシンプルだ。「答えのない時ほど“原点回帰”」、「人材育成、研修、実践のステップをもう一度見直すべき」という。金井氏は、旅行会社の経営者の立場として、人材育成がコストや時間を要することから取り組みにくいとしつつ、「時間がないといっても、そうしなければ崖から落ちる」と強く主張。「回り道に思えるかもしれないが、原点回帰。答えは必ず存在することを信じて、皆で取り組んでいくべき」と訴えた。