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ヒットの内側を分析、旅行業への応用提案-海外旅行動向シンポジウム

  • 2011年7月26日
(左から)ヒットコンテンツ研究所代表取締役社長の吉田就彦氏、同会社マーケティング・アナリストの新垣久史氏

 財団法人日本交通社(JTBF)が先ごろ開催した海外旅行動向シンポジウム第2部では、「“心が動く”ヒットの方程式に学ぶ~ソーシャルメディアに声を聴く」と題し、ヒットコンテンツ研究所代表取締役社長の吉田就彦氏と同社マーケティング・アナリストの新垣久史氏が登壇した。JTBF常務理事の小林英俊氏は「ソーシャルメディアで感覚的なものをモデル化し、数量化して表すことできる」と今回の趣旨を語った。


 吉田氏と新垣氏はソーシャルメディアを通してエンターテイメント業界での分析をしており、ヒットするものには「感情が動く=楽しい」という気持ちが含まれ、それがどのように伝播していくのかが「ヒットの方程式」に隠されているという。その上で、「購買意欲」に影響を与える3つの要素として、(1)広告・宣伝・報道の効果、(2)クチコミの効果:直接コミュニケーション、(3)街中の噂:間接コミュニケーションをあげ、最も重要な要素を「間接コミュニケーション」とした。この間接コミュニケーションは情報を知り合い同士で交換しているものを他人が見ている状態で、例えばブログ、掲示板、MixiやTwitterなどのソーシャルメディアである。そこで情報発信者が語りたいことや、それがどう伝播していくのかを、読む目、見る目、感じる心の様々な分析でポイントをおさえることができる。


 また、話題の伝播では、共鳴性と周辺話題性が重要だ。共鳴性とは同じ感動を共有することで共鳴が生まれ、時間を経てもその伝播力が維持される。周辺話題性とは内容そのものではなく、その周辺にある「語りたくなる要素」をいかに発生させるかがポイントとなる。


 今回は映画「ダビンチコード」や「アバター」など、大ヒット映画の例を紹介。その感想などが書かれたブログの数や内容の統計を取り、ブログ書き込み数と興行収入が連動しているとし、吉田氏は「映画は感動体験であり、旅行も人の気持ちが動く複合要素がある。(ソーシャルメディアの分析は)観光にもぴったりだと思う」と述べ、新垣氏は「宿泊データと観光地の口コミの数をみると相関性が見てとれるはず」と語った。


 最後に小林氏は、観光によるベネフィットは数量化できないものだったが、ソーシャルメディアを使ってお客様と共鳴・共感し、分析することによって本音を探ることができる。 この方法を観光や旅行に応用して分析していくことが、旅行業界の課題と可能性であると締めくくった。