シンガポールから震災後初の訪日ツアーで20名来日「また日本に来たい」

  • 2011年5月9日
 東日本大震災後、福島原子力発電所事故による放射能漏れなどの影響で日本への渡航自粛が続くシンガポールから、震災後初めて訪日ツアーが実施された。ツアーを企画、催行したのはシンガポールで訪日旅行を専門に取り扱う旅行会社「FOLLOW ME JAPAN」。シンガポール航空(SQ)や日本政府観光局(JNTO)と協力し、首都圏でも安全に旅行できる状況をシンガポールへ伝え、旅行需要につなげるねらいで同ツアーを企画した。同社課長の松木嘉広氏は、「訪日外客減少や旅行自粛などでホテルでも空室が発生していると聞いた。送客することで日本を元気付けたかった」と話しており、同ツアーを契機とした訪日旅行需要回復に期待する。同ツアーは4月30日から5月4日までの5日間にわたり、20人のシンガポール人観光客が参加して東京都内や箱根、山梨などを訪れた。

 今回は通常の半額程度の旅行代金で設定し20名の定員で同社のリピーター客のみに告知したところ、約3日間で定員に達した。シンガポールでは日本への渡航自粛が勧告されており(5月2日時点)、メディアでも“日本=キケン”といった印象を与える報道が多かったが、震災後初めての訪日ツアーということで空港で出発する様子が現地メディアで大きく報じられるなど、注目は高かったという。松木氏は、「日本でもシンガポールでも反応があり、アピールできた」と述べる。

 実際にツアーに参加した男性、ラムさんは今回で日本への渡航は20回目というリピーターで、「大好きな日本に行くことで手助けしたかった。メディアや友人を通じて日本は大丈夫と伝えたい」と話す。また、放射線量についての資料や情報を旅行会社が事前に提供していたことで「心配することなく参加できた」と述べ、「とてもいい旅行ができている」と満足そうに語った。見頃が終了していると思っていた桜を見ながらの食事や、懐石料理のおいしさが最も印象に残っているといい、「また日本に来たい」と話していた。

 フォローミージャパンの日本への送客人数は年間約5000人。訪日旅行市場が伸び始め、今後さらに販売を強化していこうとしていたところで震災が発生したという。4月から7月にかけて計4本のチャーター便利用商品も催行が決定していたが全てキャンセルになるなど大きな影響を受けた。今回のツアー実施により、「6月以降の訪日旅行に動きが出るのでは」と期待する。


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