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投稿:地元旅行会社への優先発注を(山形県の旅行会社社長)

  • 2011年5月10日
山形E旅・代表取締役 金田史生氏

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 私は山形県山形市で第2種旅行業を営むものです。大震災後の影響について、発生時からGW期間までの状況を思い出しながらドキュメント的にお伝えしたいと存じます。

1、発生当時から数日間

 山形県内陸部は震度4〜5強。強い揺れが長く、数分続いたように感じた。建物のなかにいた人たちはみんな外に出て、不安そうに辺りを見渡していた。

 直接的な被害(建物倒壊等)はほとんど無かったが、地震直後から丸1日くらい停電。携帯も繋がらない。コンビニやスーパーからは数日間モノが無くなった。

 ガソリンスタンドでは長蛇の列が1週間くらい続き、燃料不足で出勤もままならず各企業では自宅待機が多く見られた。山形県の3月はまだまだ寒いため、灯油等の燃料も必要になる訳だがなかなか手に入らない。

 山形新幹線は完全ストップ。山形空港は臨時便激増で24時間体制。

 当社では停電解消後(翌日)からはキャンセルの電話対応に追われる。当社は3日間程度で、予約済みだったものだけでなく、進行中(確定前・計画段階)のものも含め、先の仕事全てを失った。予約済みだった分だけでも約1500万円、進行中の分をあわせると5000万円以上の損失だろう。

2、一週間後

 ガソリン不足がほぼ解消し、モノも手に入るようになったので、通常レベルに回復した様子。

 旅行に関しては「近隣の地域で被災しているのに、、」といった感情が圧倒的。旅行の話など口にもできない。旅行積立金を義援金に回す企業や団体が急増。

 当社の仕事は全くなし。キャンセルも落ち着き、電話も鳴らない。山形新幹線はストップしたまま。山形空港利用の航空便は旅行者用でなく避難者向け、支援者向けのため空港内で行列、我々も含め一般者は予約すらできない。

3、1ヶ月後

 山形新幹線が回復。暫定ダイヤ(通常の半分程度の本数)で運行。だが旅行に行くと言う人はいない。業務上どうしても、という人たちから、少しずつ手配依頼が来るようにはなった。

 仙台空港が暫定的に回復。だが旅行商品には使えない。というよりも仙台空港までの足がないため、山形県人の利用はほぼゼロか。山形空港臨時便は減少傾向へ。もともとあまり飛んでいないので当然といえば当然。

 団体旅行は皆無。商談に行っても「9月以降かな」といった消極的な答えが大多数。つまり今後8月いっぱいまでは、個人旅行はあっても、団体旅行はない、という状況が感じ取れる。

4、ゴールデンウィーク

 直前間際の問合せが急増。行き先は日本海側の温泉地や山形県内、栃木県の那須などだったが、行楽地や温泉地がどこも一杯でなかなか予約が取れずに、断ることも多かったため、前年比30%程度で推移。

5、総括

 当社は、売上的には3月、4月は前年比20%(80%減)で推移。9月以降の回復を期待しても、今年度の目標は前年比60%と見込んでいます。このような状況は東北地方の中小旅行業者にほぼ当てはまるのではないでしょうか。

 今回の大震災の影響を考えたとき、他の業界と比べても、とりわけ観光業界のなかでも、恐らく我々中小旅行業者が最も厳しいのではないでしょうか。旅行業者にはどこからも援助がないわけですし。これでは、ほとんどの企業が廃業に追い込まれてしまうかも知れません。

そうならないための対応策として以下の項目を強く要望いたします。

1、更新登録の延長

 最低2年から3年の延長は必要かと思われます。

2、地元企業への優先発注

 正当な競争概念は理解できますが、いまはそんなことさえも超越した施策が必要ではないかと思います。過当競争を控え、地元中小企業存続への配慮をお願いします。他業界ではよくあることなのです。我々旅行業界もぜひお願いします。特に、官公庁関係・学校関係などに対しては、文書等で強く要望していただきたいと存じます。

3、旅行会社を対象とした支援

 例えば、旅行会社を対象にした“地域振興券”のような政策をおこなっていただきたいです。地元の旅行会社でしか使えない、もしくは地元の旅行会社を通じて予約した施設でしか使えないようにすれば直接売上にもつながり、旅行需要の掘り起こしにもなります。消費期限があれば必ず使いますし、旅行に出れば旅先の各種施設や食事などにお金を落とすことにもなるでしょう。ぜひ国や県にこうした政策をおこなってもらいたいと思います。


※メッセージは5月7日に受け取り、確認の上、掲載しました。

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