新春トップインタビュー:楽天トラベル代表取締役社長 岡武公士氏

  • 2010年1月8日
「総合化」に向けて着々とビジネス展開
2010年もレジャー客、グローバル市場をさらに強化


 楽天トラベルは2009年度第3四半期で過去最高の結果を残すなど、順調に業績を伸ばしている。特にレジャー目的の予約の伸び率は高く、出張予約が低迷している現状で、同社ではレジャー市場に大きな期待を寄せる。また、海外へのネットワーク拡大を進め、「総合化」に向けた動きも積極的に展開しているところだ。大手旅行会社がオンラインビジネスにも注力していくなか、「ますます競争が厳しくなる」と語る岡武公士社長に、2009年の振り返りと2010年の展望を聞いた。(聞き手:本誌編集長 松本裕一)


−新型インフルエンザなどにより海外、国内旅行とも厳しい状況が続いた2009年においても、御社は順調に業績を伸ばしています。どのような年だったでしょうか

岡武公士氏(以下、敬称略) 新型インフルエンザは、5月にキャンセルが増加したものの、それ以降はあまりその影響は感じていない。団体旅行に比べて、個人旅行への影響は少なかったのではないかと見ている。第3四半期は通常旅行者が減る時期だが、今年は四半期ベースでは過去最高益を記録した。これは他社と同様に、燃油サーチャージの一時的廃止や円高などで、お盆の時期と9月のシルバーウィークに予約数が増加したことが大きい。

 また、2008年夏から業務渡航の需要と考えられる一人利用の伸びがよくなく、2009年はレジャーに注力したが、第3四半期でレジャー利用が前年比で36%増加し、レジャーの割合が5割を超える月もあった。


−2010年の需要動向はどのような見通しでしょうか

岡武 出張需要に回復の兆しはあるが、まずはより一層レジャーを活性化させていきたい。レジャーでは足回りの向上や、(旅行会社のカウンターでできることをすべてサイト上で提供する)「総合化」を着実に進めていく考えだ。団体旅行も、すでにシステム上では99名まで受け付けられるようにしており、20名規模の申し込みもある。

 また、国内と国際とを均等に伸ばしていく努力も必要だろう。インバウンドについては、我々は日本最大級の宿泊予約件数をあげている。1位は英語圏、2位は韓国。前年比で100%増の伸び率だが、まだまだ伸び代はある。

−海外新支店の展開など2010年の計画を教えてください

岡武 2010年は、2009年に新しく設けた北京、香港、台湾、ハワイの営業拠点を育てていく年だと考えている。北京、香港、台湾は2002年から営業を開始していた韓国の、ハワイはグアムの“横展開”というイメージだ。ハワイについては年末年始で前年比125%増と伸びているが、まだまだボリューム的には満足できる数字ではない。

 新支店の開設は、日本人旅行者の多いデスティネーションから展開していく考えだ。次をどこにするかはまだ決めていないが、人気トップ10に入っているデスティネーションから攻めていく。また、そのような戦略なので、最終的にネットワークをどれくらい広げるかも現時点では未定だ。小さな実験をしながら広げていくというスタンスだ。

−今後、大手旅行会社がこれまで以上にオンライン販売に注力しようとしていますが、業界の勢力図はどうなっていくと考えていますか

岡武 競争はますます厳しくなるだろう。しかし、戦略は変えず、淡々とすべきことをする。我々を必要としてくれるお客様は今後も増えていくはずだ。一方、高齢化にともなって我々を必要としないお客様も増えていく。旅行のコーディネートを求める人と一人で旅行を組み立てる人との二極化がさらに進むのではないか。その中で我々は、一人で旅行を組み立てるのが面倒だと考えている人に対して、そのハードルを下げていく努力も続けていかなければならない。

−「総合化」について、現在の進捗状況をお聞かせください

岡武 航空会社や鉄道会社など、“足回り”の企業の下にはすべて旅行会社がついている。その状況の中で、我々が宿泊に加えて、足回りを取り扱っていくにはどうすればいいか、ここ10年ほど考えてきた。つまりは、(旅行業界の)文化を変えないと難しいのだろう。そういう意味では、全日空(NH)さんには楽天ANAトラベルオンラインで英断をしていただけた。

 総合化とは付加価値をいかにつけていくかだと思う。例えば、キャディーなしのゴルフが流行っているが、素晴らしいキャディーならお金を出してアドバイスをもらいたいと思う人も多いはず。旅行でも同じことで、例えば、中国からのインバウンドで中国語ができる添乗員にはそれだけで付加価値がつくはずだ。

−付加価値は現在の旅行業界のキーワードと考えられますが、消費者が旅行会社に求めているものは何だとお考えですか

岡武 付加価値とは安心感、ブランド力、信頼性などだ。付加価値は全国各地に存在しており、その価値とお客様の要望とをインターネット上でマッチングし、流通させることが大切になってくる。現在、旅行業界ではいかに安いかが価値になってしまっているのが残念なところだ。

 総合旅行サイトへの進化において、インターネットで“団体の中の団体”である修学旅行を取り扱えるようになったら、そこが一つの終着点かもしれない。おそらく、修学旅行がもっと体験型になって小グループになれば可能性が出てくるのではないか。

−ありがとうございました


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