日本ナショナルトラスト、事業運営の方向性をまとめる−厳しい財政に対応へ

  • 2008年6月4日
 財団法人日本ナショナルトラストは近年の経済環境の厳しさから、事務局の体制や今後の事業運営全般についての報告書を取りまとめた。これは、会員数の減少、助成団体から支援打ち切りにより、財政状況が厳しいことへの抜本的な対応を検討したもの。既に、事務所の移転や事務局では役員の無給化、職員を5名から3名にするなどリストラをしているが、東京都文京区の旧安田楠雄邸庭園、京都市左京区の駒井家住宅、静岡県島田市のSL列車トラストトレインなど、資金不足を原因として、保護資産の計画的な維持、修復が困難にある。こうした問題意識から、報告書では5ヵ年程度の中期計画を策定し、難局を乗り切るような方向性を描いている。

 まず、会員数の拡大、事業賛助金の増額等により、経常的収入を確保し、事務局の体制強化を図ることをあげつつ、保護資産毎に会員やボランティアの組織化、または募金体制の構築などをあげている。また、旅行会社、イベント開催、ロケ地紹介活動をおこなう専門家を含めた利用、活用の推進を図ることを提言。また、新規資産の取得を控え、既存事業のうち会報誌などは季刊化することでコスト削減も継続。その一方で、会員増や満足を高める会員の集い、地元との交流会など様々な活動への参加機会をできるだけ多く設定し、参加機会を拡大する。

 報告書は、財団に「地域遺産の活用に向けた今後の体制のあり方検討委員会」を設置し、今年2月から5回にわたって検討を進めたもの。東京大学名誉教授で日本ナショナルトラスト観光資源専門委員の井手久登氏を委員長として、旅行会社担当者や民間、銀行、国土交通省などから委員を集めて取りまとめた。