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取材ノート:日本インバウンドのビジネスモデルの課題は−JATA経営フォーラム

  • 2008年3月6日
 JATA経営フォーラム分科会G「日本型インバウンドモデルの確立を目指す!」では、2007年に13.8%増の834万人となった訪日旅行者数に対し、インバウンドへの取組みが総じて遅れぎみの日本の旅行会社が、ツアーオペレーターとして成功する方法を検討した。コメンテーターには、ケイアイイーチャイナ訪日旅行事業部長の石田護朗氏、JTBグローバルマーケティング&トラベル代表取締役社長の野口英明氏、ハナツアー・ジャパン代表取締役の李炳燦氏が自社の取り組みと課題について語った。

▽団体からFITへ

 中国の旅行会社を取引対象とする石田氏は、商務旅行(いわゆるビジネストリップ)と教育旅行、家族旅行やグループ旅行が伸びているものの、3月3日から団体観光客に限り発給していた査証の要件が緩和されたことに言及。制度変更が加えられたものの、急激な増加はないとも予想。ただし、この動きは無査証へ向けた第一歩と考え、グループからFITへの移行を想定し、今後につなげたいという考えだ。

 一方、韓国では2007年の訪日旅行者数約260万人のうち、半数近くがFITであった。李氏は今後もFITは増加するとみている。韓国ではFITで旅行することの多い20代を中心に、多くの若い世代が日本を訪問している。この傾向が続くと仮定すれば、2010年の首都圏空港の容量が拡大する時期には、多くの割合を占めてくると予想。ハナツアー・ジャパンでは、2007年に取り扱った訪日韓国人25万3000人のうち約8割が団体だが、今後はFITの比率を増やすことを目指していくという。


▽付加価値の高い商品開発へ

 野口氏はワールドカップ、愛・地球万博やモーターショーなど、世界的イベントがない年の集客について、MICEの取りこみ強化を図る一方、リピーターの増加のために新しい商品の創造と顧客満足を高める必要性を強く意識している。特に、サンライズツアーでは、東京でこの数年、集客力のある商品に変化がないことから、今後の市場の変化を意識した取り組みがポイントとなる考えだ。そのキーワードとして「デスティネーション・マネージメント・カンパニー(DMC)」をあげ、現地の素材を活かした商品開発と受入れ態勢を整えることを訴える。また、価格競争からの脱却法として、旅行者が何を求めているか正確にとらえることとして、「質の高い商品を適正価格で提供すれば価格競争に走らない」と語る。

 石田氏は、「非日常性」を旅の魅力と定義し、日本の日常にあるもの、例えば公共交通機関を利用した観光も体験のひとつになりえるとして、素材の活かし方や見せ方で魅力あるものとなると提案する。特に、中国は一人っ子の家庭が増加しており、家族旅行をターゲットに彼らが興味を持つ科学技術、環境、テーマパーク、ショッピングなど、旅行の目的が明確なパッケージ型の商品化が必要とし、量の拡大と品質向上でリピーター確保を目指す考え。そのため、「旅行者のニーズを把握している現地の旅行会社とのコミュニケーションを欠かさず、商品提案をしていきたい」と述べた。


▽インバウンドの課題−添乗員と仕入れ

 石田氏は中国について、旅行代金や団体ビザの壁インバウンド料金の設定のほか、要望の多い日本企業の視察、日本の観光バスの拘束時間の制限への理解などをあげ、訪日間際、あるいは訪日後の変更や取消しなど一部については、説明により少しずつ改善されているという。こういった受入れ体制の整備と、訪日中国人の日本の法律への理解という双方の課題をあげ、添乗員不足の問題は「緩和策が必要」とし、インバウンドの国内スタッフと外国人スタッフの両面で人材育成が必要であるという。

 李氏は、好調な韓国市場を背景に、仕入れは大きな課題としてあげる。インバウンド料金と国内料金の違い、さらに好景気には単価重視でFITの受け入れが多くなる一方、不景気は稼動重視で団体客の受け入れが増える状況にあり、客室確保が難しいという。安全面でも魅力ある日本はリピーターが多く、自社で管理するバスをはじめ高品質な商品提供で顧客満足を満たし、さらに多くの訪日旅行者を伸ばしていく考えだ。