元KIE USA代表の第二のキャリア。足摺海洋館「SATOUMI」、地域愛に根差した施設が取り組む観光促進

  • 2023年9月8日
-人手不足などの問題はありませんか。

新野 職員は全部で20名ほどしかいませんが人員不足というほどではありません。スタッフの年齢も20代~30代がほとんどで、若手が育っています。先ほど説明したように、スタッフ自らが潜ったり釣ったりして生き物を収集してくるうちのスタイルはユニークで、魚好きなスタッフが働く場としても注目されています。

-季節に応じてさまざまなイベントを次々と企画していますが、そのアイデアはやはり若いスタッフの発案が多いのですか。

浜田 若手中心というよりも、全体会議で皆がアイデアを出し合う形です。もちろん若手も遠慮せずアイデアを出しやすいように、日頃からコミュニケーションを図っていますし、風通し良く意見を言いやすい環境はあると思います。もっとも若手に聞いてみないことには本音は分かりませんが。

-今後はどのような形でプロモーションを展開していく考えですか。

浜田 高知県では、高知県出身の植物学者、牧野富太郎をモデルとしたNHK連続テレビ小説『らんまん』の放送に合わせて観光キャンペーンを展開していますが、これが終わった後の新たな観光戦略を決めています。そのコンセプトは「極上の田舎、高知。」で、観光客の長期滞在を促す方針です。自然豊かな高知の魅力を生かしつつ、歴史や文化を体験してもらいながら長期滞在需要を掘り起こすのが狙いです。そうした長期滞在を促す素材のひとつとして水族館を位置づけていく考えです。

 個人的には高知の体験価値を象徴するのが、「ひろめ市場」の雰囲気です。観光客とフランクに接して壁を作らず受け入れてくれる。飲食店で知らないおじさんが話しかけて来て、「どっから来たの?」「東京!」「一杯やるか」とすぐに打ち解ける。この雰囲気が高知体験の魅力です。私にはその原体験があるのです。米国赴任から帰って休日に高知の浜辺でトコブシやサザエを獲って遊んでいると、漁師がやってきて「あっちへ行け」というのです。無断で魚介を獲っているのをとがめられたのかと思ったら、「このあたりより、あっちの方がいっぱい獲れるぞ」というアドバイスでした。漠然とした言い方になってしまいますが、こういう高知の大らかさやフランクな気質を何とか観光の魅力につなげる工夫をしていきたいと思っています。

-最後にトラベルビジョンの読者にメッセージをお願いいたします。

新野 日本中に、あるいは世界中に水族館がありますが、「足摺海洋館SATOUMI」は地元の生き物にフォーカスして、その環境も生き物が生活していた場所を再現することを徹底していますから、生き物たちも生き生きとした顔つきをしています。この点はどこにも負けません。旅行業界の皆様には、エンターテインメントに傾きすぎない本物路線の水族館としての「足摺海洋館SATOUMI」に、是非ともお客様をお送りください。

浜田 長年にわたり旅行会社で仕事をし、現在は水族館業に従事しています。少し異なる面もありますが、広い意味では同じ観光産業の一員だと実感しています。実際に私は「ほぼ同じだな」という感覚を持っています。トラブル対応を含め人が解決しなければならない面が多いのも共通。ITが進化したとしても、AIとチャットするだけでは問題は解決しません。そういう意味で旅行業界で培った知識や経験は、広く観光産業で活かすことが可能です。旅行業界のプロである読者の皆さんの活躍の余地と可能性は、大きく広がっていると思います。

-ありがとうございました。