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澤田氏「HISは平和産業へ脱皮」-40周年&新春インタビュー

ホールディングス制移行で事業多角化を加速
期待の星は太陽光パネル、新たな航空券ビジネスも

-これから数年で、HISを劇的に変えるのはどの事業ですか

澤田氏 澤田 最も期待しているのは太陽光発電で、今年は国内に、世界一薄くて安く、性能が良いフィルム型太陽光パネルの生産工場を建設する。開発しているパネルは1キロワットあたりの発電コストが3円から4円程度で、火力発電の8円、LNG(液化天然ガス)の10円、石油の13円、既存の太陽光発電の15円に比べてかなり安い。現在支給されている、国の補助金がなくなっても十分に採算が取れると思う。

 このフィルム型パネルを開発したのはHTBが投資したポーランドのサウル・テクノロジーズというベンチャー企業で、サウル・テクノロジーズがヨーロッパで販売するための現地工場は、昨年の12月に完成した。我々の日本工場も2、3年後には、国内とアジアへの出荷を開始できるだろう。このほか、海外の270軒の店舗網を活かした商社事業にも力を入れる。

-国内外で計530軒近くに上る、リアル店舗の維持に対するお考えをお聞かせください。昨年は店舗での相談料徴収を試みた旅行会社もあり、業界の内外で注目を集めましたが

澤田 現在はインターネットやスマートフォンが発達し、航空券やホテルについても直販のためのシステムが整い、旅行会社の存在意義は変わってきている。そのような状況のなかでも我々は店舗数を維持しているが、今後は緩やかに減るだろう。かつては店舗をどんどん作ることで売上高を伸ばすことができたが、そのような時代は半分終わっている。100年以上続いたトーマス・クックでも経営破綻したように、時代は大きく変わっている。

 一方で、店舗が生き残る余地はまだまだあるので、その方法を色々と研究してもいる。ハワイ専門店やヨーロッパ専門店など、特殊な店舗は今後も生き残るだろうし、まだまだ実験の余地がある。昨年12月に新たに生まれ変わった「東急プラザ渋谷」には、プレミアムなオーダーメイド型旅行を提案する専門店として「High Premium HIS Hills Shibuya」をオープンした。店舗での相談料徴収については、なかなか難しいと思う。

-オンライン販売の強化に対するお考えもお聞かせください

澤田 オンライン販売の成長はHISにおいても明らかだ。毎年2桁成長を続けているし、圧倒的に生産性が高い。オンライン販売はこれからも伸びるので、今後は世界的に通用するOTAのシステムを構築する必要があると考えている。

-21年に立ち上げる予定の「グローバル・インバウンド・プラットフォーム」についてお聞かせください

澤田 日本に限らず世界規模で使える、BtoBあるいはBtoBtoCの仕入・流通・販売システムとして構築するもので、さまざまなOTAなどとも接続する。リリースまであと2、3年ほどかかると思うが、世界中の旅行会社で使ってもらえるプラットフォームビジネスに育てるつもりだ。

 我々は日本を基準に物事を考えていない。すでに旅行事業の売上高の半分近くを海外で稼いでいるし、あと数年で国内市場のそれを上回るだろう。全世界に向けた旅行予約や情報発信をめざして、現在は特にアジアでの事業拡大に注力している。

-先日は新たに「LCCとの接続やボーダーレス発券、NDCに対応した最新技術を活かし、BtoBで航空券の発券を効率化」している、東南アジアのトラベルテック企業をM&Aで取得する計画を発表されました

澤田 M&Aによってアジア全域の旅行会社を網羅する考えだが、特に旅行消費に占める航空券販売の割合が大きく、かつIATA代理店が少ない未開拓市場で、アウトバウンド事業を大きく拡大したい。今後の航空券流通については日本だけでなく、海外のIATA代理店におけるボーダーレス発券を視野に入れている。

 「時差は金なり」と言われるが、航空券の値段は場所や為替の動きによって変わってくるので、ITとシステムの力で最適な場所や為替変動のタイミングをとらえて発券したいと考えている。アジアのマーケットは大きく、これからもまだまだ伸びる。