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AIで航空券とホテルの料金変動を予測-春山佳久氏率いるatta

新機能で「検索の一歩手前」のユーザーを獲得
元スカイスキャナー日本代表が見据える世界

-「atta」の提供開始にあたり参考にした企業や、類似するビジネスモデルはありますか

春山氏 春山 カナダのモントリオールに、AIを活用して航空券の価格変動予測サービスを提供しているHopperというOTAがある。最近はホテルの価格変動予測にも取り組んでいるようだが、HopperはOTAでattaはメタサーチという違いがある。Hopperで最も参考になるのはUIとUXで、やはり4200万ダウンロードを誇るだけに見るべきところは多い。日本に類似するビジネスモデルはないが、他のメタサーチやOTAについては研究している。

 スカイスキャナーなどをはじめ、値下がり情報の通知機能をもつメタサーチは沢山あるが、attaは単に価格変動があったことをお知らせするのではなく、「今後、現在の最安値より安くなる確率 90%」という風に、将来の変動の可能性を可視化して、ユーザーが意志決定の参考にできる点が他社と異なる。天気予報のように「降水確率が20%なら傘を持たずに出かけよう」「50%だったら傘を持っていこう」と判断するための情報と考えていただいていいが、予約の際の意志決定には大いに役に立つ。

-現在の利用状況を教えてください

「atta」の航空券検索画面。検索結果とともに「今後、現在の最安値より安くなる確率 88%」と価格変動の予測が示されている(クリックで拡大)春山 アプリの正式版をリリースした7月以降の累計ダウンロード数は、全世界で15万弱ほどだ。およそ55%が日本人、45%が外国人で、45%のうち東南アジアが29%を占め、残りは韓国・中国・台湾・香港の東アジアが8%、欧州・中近東が5%、米国が4%となっている。

 このうち日本人については25歳から34歳までの女性が最も多く、次が20歳から24歳までの女性で、日本人全体における女性の割合は65%に上る。既存のメタサーチを使い慣れた人がメディアの記事などで「atta」の存在を知り、流れてくるケースが多い。

 日本国内の航空券や宿泊施設の検索と予約について言えば、日本人と外国人の割合は半々だ。また、外国人については訪日旅行で使用されるよりも、海外to海外の第三国旅行で使用される割合の方が多い。

 現在の提供言語は日本語と英語だけだが、アジア各国を含めて、ユーザーはそれほど英語での利用を苦にしていないように見える。ただ、今後のことを考えれば、ユーザーの多い韓国に向けて韓国語でも提供するなど、多言語化を進めたいと考えている。

-現在の普及状況や利用状況をどのように見ていますか

春山 ほぼ想定通りで、アプリのダウンロード数については、年末年始に向けたプロモーションでさらに増やせると思う。また、MAU(マンスリー・アクティブ・ユーザー)の数字も良く、継続的に利用してもらえていることがわかる。そのほか、予め設定したKPIの目標も順調にクリアしている。売上高については公表していないが、提供を開始して以来毎月、前月比の約3倍のペースで伸びている。

 一方で課題もある。最初はできるだけシンプルなUIにしようと思い、トップ画面を検索窓口だけにしたが、ユーザーが検索前に離脱する確率が高かった。色々と調査した結果、トップ画面をシンプルにしすぎると、行き先を特に決めていないユーザーは何から検索すればいいのか分からず、簡単に離脱してしまうことが分かった。

 改善策として、例えばホテル検索の場合は「値下がりした宿泊施設のオススメ5選」を表示するなど、ユーザーの参考になりそうな情報を提供して、何らかの道筋を示す方向で試行錯誤している。検索にまで至れば、その後はスムーズに予約につながるケースが多く、コンバージョンレートは大手のメタサーチと比較しても良い方だと思う。