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週間ランキング、1位はUA仙台運休、「インスタ映え」の弊害も

[総評] 今週は、ユナイテッド航空(UA)が仙台/グアム線を運休するとともに関空と中部からのグアム線も減便する記事が1位でした。UAでは採算がとれないことを理由としており、1月15日から先行して運休した新千歳線と合わせて非常に大きな座席減となります。

 ほかにも理由はあるかもしれませんが、米朝関係が最も深刻な影響をもたらしていることは間違いないでしょう。短期間にこれほどのキャパシティ縮減に見舞われたデスティネーションは、少なくとも過去10年ではなかったのではないかと思いますが、グアム政府観光局(GVB)がどのようにこの苦境を乗り越えるのか注視が必要となります。

 GVBは、昨年11月30日から12月3日にかけて約400名を現地に集めて「グアム・メガ・ファム・ツアー」を実施したばかり(リンク)で、そこでは1967年にパンアメリカン航空が初めてグアムから日本へ就航してから50年の節目を迎えたことを記念するとともに、北朝鮮情勢に揺れる市場の回復に向けて気勢を上げたわけですが、それから2ヶ月も経たないうちのこの発表は残念というかなんというか、水を差すという言葉がこれほどぴったり来る流れはここ最近ではなかなか記憶がありません。

 もちろん「赤字覚悟で飛び続けてほしい」などというのは勝手極まりない話です。航空会社からすれば「座席を買い取ってくれるか、助成金でも出してくれるならいいんですが」というところでしょうし、UAの判断は粛々と受け止めるしかないでしょう。(それでもなお、メガ・ファムから1ヶ月少々での腰砕けを思うと、もう少しどうにかならなかったのかと考えてしまいますが。)

 一方、聞くところによるとUAの福岡/グアム線もロードファクター的に厳しい状況という噂ですが、減便や運休の対象とはなっていません(裏取りはしていませんので間違っていればご指摘ください)。この理由を考えると、福岡は大変混雑している空港で、新千歳や仙台と違って国土交通省から「混雑空港」として指定されており、一度運航を止めてしまうと同じ時間帯のスロットを確保することが難しくなることが背景にあるのではないかと思われます。

 逆にいえば、米国と北朝鮮の構図が短期的に変化するとは見通せないなかで、いつかUAが福岡(や関空、中部)の路線にも手を付けることがあれば、その時はいよいよ本格的な苦境と考えられるかもしれません。

 ちなみに、関係ありませんがアジア太平洋地域における米系航空会社の話題でいうと、デルタ航空(DL)と大韓航空(KE)が共同事業の開始を間近に控えており、この点も、日本市場での存在感の大きなDLのことですし日本路線にどのような影響をもたらすか気になるところです。

 さて、今週はこのほか、第10位に珍しく日本海外ツアーオペレーター協会(OTOA)の提供によるコンテンツがランクインしました。OTOAの情報はOTOA加盟のオペレーター各社が現地情報のアップデートを届けてくださるもので、ニッチな情報も多いことからランキングに入ることはほとんどないのですが、今回の記事はある社会現象に関わるものであるがために注目が高まったのではないかと考えられます。

 記事の内容は、香港の「モンスターマンション」と呼ばれる集合住宅の私有地への住民以外の立ち入りが禁止されたというものです。ご存じの方も多いかと思います(だからランクインしたわけですが)が、このマンションは居室が密集している様子が目を引き、また壁がカラフルということもあっていわゆる「インスタ映え」するスポットとして知られています。つまり、旅行者がひっきりなしに訪れて写真を撮って帰っていくという状況に住民も嫌気がさしたということになります。

 「インスタ映え」は旅行業界でも近年まれに見るブームとなっており、旅行会社も観光局もこぞって商品やキャンペーンに取り組んでいます(リンク)。しかし、オーバーツーリズムの一種とも考えられるこうした事態が顕在化すると、そもそもの「インスタ映え狂騒曲」的な側面を含めて、果たして盲目的に追随するべき話なのかどうか疑問に思えてしまいます。(松本)

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