外国人の地方誘客、ウェブの最大限活用を-安心・安全確保も課題

  • 2014年10月21日

FIT層ターゲットにSNSやウェブサイトを活用
ICTで受入環境整備も

日本は災害大国、万全の備えを
ICT活用は大きなアピールポイント

KCSプロダクト・ソリューション室長の仲条仁氏  セミナーの後半では、建設、観光振興コンサルティングなどを手がけるケー・シー・エス(KCS)プロダクト・ソリューション室長の仲条仁氏が登壇。「観光客の『安心』を醸成する災害時の避難誘導対策とは」をテーマに、観光地における避難誘導の取組事例や、観光客避難における人の動きを把握するビッグデータの活用などを紹介した。

 仲条氏はまず、「日本の風光明媚な観光地の多くは自然災害がセット」であることを強調。その上で、「観光客の安全確保を十分考える必要がある」と述べ、観光地では観光客が自ら迷うなく避難できる案内板などの整備と、どれくらいの観光客が訪れているかを把握する受入側の体制構築が外国人を呼び込む上で取り組むべき課題になるとした。

 2011年の東日本大震災を例にすると「もし(観光の)ピーク時だったら、もし津波の到達がもっと早かったら、もし外国人が多かったら、人的被害はもっと大きくなっていたかもしれない」と仲条氏は指摘。観光客の安全確保対策は、国だけでなく自治体でも検討課題であることを訴えた。

 すでに一部の自治体では、外国語を併記した避難誘導サインの導入や避難を考慮した多言語観光マップの導入、外国人でも分かる避難所生活の指差し対話集などを導入しているものの、仲条氏は「緊急時に対応するインターネットの活用はまだ遅れている」と現状を説明。観光客の行動実態把握や避難支援をするためのビッグデータの活用、観光客がみずから避難したり居場所を伝えるためのスマートフォン用アプリの導入が求められるという。

 ビッグデータの活用では、ゼンリンデータコムが提供している混雑統計、NTTドコモのモバイル空間統計などが利用でき、通常時の観光客の動きを把握できれば、避難所の位置や収容人数、備蓄資材の量などを事前に対処できる。また、地元不案内の観光客が多い地区では、案内標識などの工夫もできるメリットがある。ただし、データの調達にはコストがかさみ、データの解析・分析・コンサルティングに費用が必要となるなど、自治体単独で取り組むには難しい点もある。

 そこで、仲条氏はKCSがスマートフォン用アプリとして開発した「Knavi観光」と「Knavi防災」の活用を提案。観光情報アプリとして機能するKnavi観光で利用者行動データが蓄積でき、災害発生時には自動的に避難支援アプリに切り替わるKnavi防災で最適な避難情報をユーザーに提供できることを紹介した。また、防災アプリを導入した自治体は、管理者としてユーザーの避難経路や避難にかかった時間などが把握できるため、地区の避難計画の見直しに役立てられるという。

 仲条氏は、「最新のICT技術を活用した受入体制の整備は、観光地の魅力や安全性を世界に大きくアピールできる」点を強調。国だけでなく、自治体単位でも安心・安全確保への取り組みが求められていることを訴えた。

取材:川嶋光智