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価値創造、困った時こそ好機-JATA経営フォーラム基調講演

企業価値とは顧客信頼度の最大化
「なくてはならない」存在に

▽ミスや不正はやむを得ず、隠すことこそ悪

 坂根氏が社長を退任する際に、社員が共有すべき価値観を取りまとめたものが「コマツウェイ」。講演では、コーポレート・ガバナンスの充実として、「取締役会を活性化すること」、「全ステークホルダーとのコミュニケーションをトップ自らとること」、「ビジネス社会のルールを遵守すること」、「決してリスクの処理を先送りしないこと」、「常に後継者育成を考えること」を列挙し、このうちビジネス社会のルール遵守について説明した。

 いわゆる不祥事をなくす取り組みだが、「人間だから必ずミスはある」と坂根氏。不正もそれを定義する規制自体が変わることもあり、これらをなくすことは不可能だ。このため、坂根氏は「(ミスを)起こすことより、隠すことが悪い」と話す。

 では、ミスや不正をいかに見つけるか。「今後起こったバッドニュースは必ず社長に上げろ」といっても報告があがる保証はない。コマツでは、月次の報告書が翌月に世界中から届くが、当時は良い話や業績ばかり書いてあったという。

 そこで坂根氏は、書く順番を変えさせ、最初にコンプライアンスや環境、安全に関係する事案、2番目に顧客から出ているクレームや品質問題、3番目に機械故障時の部品補給の達成状況、最後に業績とした。補給部品については「まともに届けられないのでは新車を売る必要はない」との考えで、こうした取り組みにより報告が上がりやすくなったという。

 さらに、それ以前に発生していたリスクについても着手。2006年には、「全世界の子会社に今回限り許すから、危ないと思われることはすべて報告するよう求めた」といい、情報を集約することができた。今でも「漏れがないわけがない」と気を緩めず、5年ごとに棚卸しをおこなっているところだ。

 坂根氏は、こうしたリスクの対処のみで「永遠のテーマ」としつつ、「なにか一つを実現しようと思ったら、会社というのは徹底して価値観と具体的な方法まで落とし込まないと代を重ねるごとに強くはならない」と強調した。