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12年の展望(1):11年業界推移取扱高、明暗分かれる-アンケート調査より

11月中旬の成田空港(午前)の様子。手荷物検査場の前には長蛇の列が  2011年の旅行業界は、東日本大震災により大きな打撃を受けた。観光庁が取りまとめた主要旅行業者58社の旅行総取扱額によると、海外旅行、国内旅行ともに8月には前年を上回り、その傾向は続いている。一方、訪日外客数は11月でも18.7%減と回復が鈍く、日本政府観光局(JNTO)の訪日外客数推計値では27.8%減の621万9300人となった。こうしたなか、2012年の旅行業界はどのように推移していくのか。トラベルビジョンでは旅行会社に11年の実績や12年の見通し、販売方針や戦略についてアンケートを実施。主要旅行業者40社のうち30社から回答を得た。本日から数回にわけ、11年の総括と12年の旅行業界の見通しを取りまとめる。第1回となる今回は、今年の展望の土台となる11年の取扱状況についてまとめた。


震災の影響額、40億円規模の会社も

 11年は東日本大震災や原子力発電所事故が海外、国内、訪日旅行全てに大きな影響を及ぼした。アンケート調査によると、同項目に回答した13社のうち業績に及ぼした影響額は、5億円以下が4社、5億から10億円が3社、10億円から15億円が1社、15億円から20億円が3社となり、20億円以上では30億円が1社、40億円が1社となった。

 震災で需要が減少したなか、回答会社のうち半数以上は被災地支援のため、ボランティアツアーや旅行代金の一部を義援金に充てるツアーなど震災復興応援ツアーを実施。また、旅行商品に被災地の産物を特典としたり、東北地方での会議誘致などもおこなったほか、余剰社宅の部屋を被災者向けに無償開放した旅行会社もあった(総合旅行会社)。さらに、全国規模のリテーラーやホールセラーなどでは、東北や首都圏以外の地域の販売強化や企業の夏休み長期化にともなうロングステイ商品の開発などの工夫も見られた。旅行商品以外では、IT投資により業務効率をあげ、人件費を抑制するなどコスト削減をはかった会社(業務渡航系)もあった。

 こうした取り組みにより、ある一定の効果はあった(総合旅行会社)という会社もあった。しかし、「震災による中止した団体旅行の再受注キャンペーンで5億円程度復活したが、焼け石に水だった」(鉄道系)という声もあがった。


海外旅行、震災響くも3割は前年超え

 11年の海外旅行取扱額では、28社の回答を得た。前年比10%以上増となったものは1社のみで、5%増から9%増が8社。回答社の30%がプラス成長となった一方、ほぼ前年並みのプラスマイナス4%以内は7社となり、5%減から9%減は4社、10%以上減は8社となった。自由回答によるプラス要因としては、回答したほとんどの旅行会社が円高をあげたほか、ある総合旅行会社からは企業の夏休みの長期化や、訪日外国人の需要減退で日本市場へ航空座席の提供がしやすい環境となったことがプラスとなったという意見もあった。また、業務渡航を扱う会社からは震災の影響で企業の海外展開が加速し、出張者数が増加したとする意見もあった。

 一方、マイナス要因としては震災や原発事故による旅行自粛に加え、中東地域の大規模な民主化運動やタイの洪水など、海外で発生した事件が目立った。さらに、業務渡航系では、出張自粛や顧客の経費削減に伴い取扱単価が減少したとする会社もあった。