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2012年海外旅行市場の背景、中長期成長は警鐘も-JTBF旅行動向シンポジウム

  • 2012年1月17日

震災後の「マインド変化」
イレギュラーな成長引き起こす

 こうした動向の変化の理由として、黒須氏は震災後の「マインド変化」を指摘する。JTBFのモニターの自由回答を見ると、「無駄をなくしたい/節約したい」「生活全体を見直したい」「一番大切なものは何か考えるようになった」「家族や人とのつながりを大切にしたい」など、心境変化を示すキーワードが見られた。

 黒須氏は若者層にも、大きなマインドの変化が見られることを紹介。例えば20代男性の海外留学が増えている傾向に、「海外に行くことに違う価値を見出し始めた。海外旅行が自己投資になったのでは」と仮説を語る。

 黒須氏は「3.11で身の回りのことを考え直すようになった」としながら、「しかし、旅行は幸いなことに、贅沢だからやらないのではなく、必要なものとして捉えられた」と説明。「旅行では一過性ではなく、蓄積になるような消費に変化している。自分の経験を積み増すような営みとして、再発見しようとしているのでは」と推察。これが、震災後のゴールデンウィークの駆け込み需要や夏休みの好調な推移、年末年始の高需要に繋がっているとする。

 ただし、黒須氏はこの増加傾向を、震災後のマインド変化による「イレギュラーなレジャー需要が貢献している」とし、基本的に長くは続かないと指摘。特に、旅券の発給数の減少傾向には「発給数の減少が続く時は人数の伸びは続かない」との持論から、中長期的な成長に黄色信号を灯した。