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新春トップインタビュー:JTB代表取締役社長 田川博己氏

「2012年、仕掛ければ動く」
中期計画は変更せず構造改革と成長戦略に注力

-2012年の見通しはいかがでしょうか

田川 何も仕掛けなければこのままだろうが、仕掛ければ相当いろいろなことが動くと思っている。「絆」など日本人としての強さが世界に発信された。それをどういう形で具現化していくか。成熟した市場での次のステップになる可能性があると思う。

 大きなイベントのひとつが日中国交正常化40周年だろう。日本発だけでなく双方向で交流が約束されているので期待が持てる。また、4月に東京と仙台でおこなわれる世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)のグローバルサミットも注目だ。これは、世界の旅行関係企業主要100社の経営者で構成するもので、サミットには国際機関、行政、経済団体など約1000名が集まり、危機管理や航空問題などについて議論する。世界の旅行関係企業に対して、日本を発信するためにもいい機会だと思う。

 例えば訪日旅行市場でいえば、日本の観光地やモノをアピールするのではなく、“日本人”を発信することが重要ではないか。世界ではこれまで日本人は分かりにくいといわれてきたが、今回の震災によって日本人の強さが伝わった。そういう日本人がいる観光地という視点が大切だろう。

 2011年と比べると海外旅行と国内旅行は間違いなくプラスになると見ている。2010年と比較してどうなるかがポイントだ。訪日旅行では日中国交正常化40周年でどうなるかに注目している。JTBとしても韓国と中国については上半期にいろいろな仕掛けをしていく。両国からの訪日旅行者がしっかり戻るのであれば、全体で800万人を超えるのではないかと考えている。


-震災発生前に立てられた中期経営計画ですが、見直しの可能性は

田川 計画を変更する考えはない。現中期経営計画では、21世紀が始まってちょうど10年、次の10年をどうスタートするかという考えのもと、2011年度を“New Departure”と位置づけた。既存の中核事業の構造改革、成長戦略と位置づけているグローバル・ビジネスや地域交流の足場を2015年度までの4年間でしっかり固める。

 今後、今回の震災のような災害があっても中期計画そのものを見直すつもりはない。長期的、安定的に利益が出る構造に作りかえていき、CSR活動や社会貢献にも力を入れていきたいと思っている。


-2012年、どの分野に重点を置くお考えでしょうか

田川 中期計画に沿ってやっていくが、ひとつは世界発着のグローバル事業だろう。これまで投資をしてきたので、これからは回収に入りたい。“交流文化事業”の柱であるDMCは相当進んできて、100億円規模までに成長した。分社化をするときから取り組んできたことだが、今後も地域それぞれの商材を開発し、商品化していきたい。

 また、店頭についても引き続きJTBの中核事業として力を入れていく考えだ。一方、ネットにも継続的に投資をしていくが、規模の論理よりも質の論理を突き詰めていきたいと思っている。ネットも安売りの方向からだいぶ変わってきた。今は、間際は除いて、質が重視されてきている。これはいい傾向だと思う。消費者もネットでの購入に慣れてきて、質を考えて買うようになってきたのではないか。ネットでも選択の時代が始まった。いよいよ勝負の時期が来たと感じている。