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現地レポート:タイ、洪水から復旧、現在の様子と観光業への影響

バンコク、アユタヤ「観光地は問題なし」、ツアー再開へ自信

ローズガーデンは洪水後もオープン継続
郊外への道路再開、一部に影響残る

ローズガーデンで日本各地からの参加者と合流

 アユタヤ同様に、バンコクから30キロほど西にあるローズガーデンも、観光できる状態にある。庭園からタイの伝統文化体験、宿泊施設まで備えており、アユタヤ同様にバンコクからの日帰り旅行や1泊旅行で組み込まれることが多い。ゴルフ場が浸水し、現在はクローズしているが、そのほかは浸水もなく通常オープン。現在はゴルフ場の水ははけ、復旧のための調査を始めたばかりだが、長く見積もっても来年6月ごろには再開できる見込みだという。

敷地内は色とりどりの花が咲く

 しかし、ローズガーデンのあるナコムパトム県は今回の洪水で大きな被害を受けた地域のひとつで、外務省の渡航情報でも「渡航の是非を検討してください」となっている。周囲は冠水し、バンコクからローズガーデンまでの道路のうち、プッタモントン通りの冠水被害は大きく、通行止めとなった。そのため、ローズガーデンは営業していたものの、洪水後は予約の95%がキャンセルになったという。

タイの伝統文化体験も可能。写真はハーブを使った薬作り

 プッタモントン通りは現在、開通しており、視察時も同道路を通行。沿道の一部では水が残る様子がうかがえ、特にローズガーデンまであと20分ほどの場所には、車の通行はできるものの道路の冠水が残り、渋滞していた。事前に道路状況を確認し、水が残る場合は徐行のため、通常よりも時間がかかることを想定してスケジュールに対応する必要がある。

プッタモントン通りの浸水箇所。300メートルくらいだが、徐行をするため、少々渋滞する

 なお、TAT副総裁のサンスーン・ガオランシータイ氏によると、浸水のあった地域については保健省が担当者を派遣。浸水が溜まって淀んでいる部分には有機物を投棄し、水が腐らないようにコントロールしていると説明し、感染症や衛生面の対策を実施していることをアピールした。





※現地取材の内容はいずれも12月14日現在



3月までキャンセル発生も、卒業旅行契機の盛り返しに期待

TAT副総裁のサンスーン・ガオランシータイ氏

 TATのサンスーン氏は、視察中に実施した説明会の中で、今後の日本市場の回復について、来年1月の第2週ごろとの見解を発表した。タイ国際航空(TG)東日本地区マーケティング部シニアマーケティングオフィサーの小俣三奈子氏も、「11月は影響を受けたが、年末年始はほとんどキャンセルがなかった。様子を見て渡航を決断する人が多いようだ」と、タイへの需要の根強さを示唆する。日本市場はFITが約7割で、特に洪水後の建て直しが必要な企業におけるビジネス需要の堅調な推移がうかがえる。ただし、レジャーを扱う視察旅行の参加者や関係者からは、楽観的な話は聞かれなかった。

エメラルド寺院からワット・ポーへ。土産物屋さんが立ち並ぶいつもの光景が広がる

 タイガーツーリストサービスのマネージング・ディレクターである上利宏氏は、「洪水後、3月出発までキャンセルが出た。FITもレジャーの場合は『そういうことが起こったところに今、わざわざ行くことはない』と、他方面への振替を希望する」と、顧客のシビアな感情を明かす。ニュー東洋トラベルの渡辺氏も、「渡航情報が下がってツアーが再開されないと厳しい」と現状を語る。先々の新規予約も少ないことから、今後は「戻りの早い若者」をターゲットにする考え。3月に向け、卒業旅行を焦点とし、商品造成を進めている。

ローズガーデンへの道中では一部のエリアで浸水した家もあった

 また、「今回の洪水が収まっても、また来年、同じことが起こったら困る」と、来年の商品造成に対する懸念を口にする参加者もいた。ただし、サンスーン氏は説明会の席で、スワンナプーム国際空港が建設段階から排水機能を考慮しており、1日1万立方メートルの排水が可能であることを説明。また、今回の洪水を受けて、政府内に「洪水復興計画委員会」と「治水開発計画委員会」の2つの特別委員会を発足しており、将来的に大規模な洪水が発生しない体制を整えていることも強調した。


取材協力:タイ国政府観光庁、日本旅行業協会(JATA)、日本海外ツアーオペレーター協会(OTOA)、日泰旅行業協会(TJTA)、タイ国際航空(TG)、全日空(NH)
取材:本誌 山田紀子