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法律豆知識(106)、海外留学の「商法」−業務提供誘引販売の注意点

  • 2006年11月11日
 海外留学に際して、帰国後、一定の仕事を提供するタイプの「商法」が見受けられる。こうした場合に発生する問題は、帰国後、予定していた仕事がウソであったり、ウソではなくともノルマの厳しい歩合の仕事で、期待された収入が得られないことから、トラブルに発展することが多い。

 この「商法」は、海外留学の部分で旅行業者が関与することになる。この際に注意して欲しいことは、こうした商法はキャッチセールスやマルチ商法を規制する「特定商品取引法」に抵触することになることだ。この「商法」は、同法の「業務提供誘引販売」(同法51条〜)に該当するのだ。なお、留学部分については、旅行業法も適用されることを忘れないでほしい。


<なぜ「業務提供誘引販売」か>

 何が問題か。帰国後、仕事が与えられ、高額収入が得られるということをエサにして、旅行契約を締結させ、高額の旅行費用を払わせる点である。

 「業務提供誘引販売」とは、このように将来、所定の業務に従事することによって得られる「業務提供利益」を収受することをもって相手を「誘引」。そして、その者に「特定の負担」を伴う、商品の販売や役務(サービス)の提供に関わる取引を示している。

 将来、仕事を与えるような顔をしながら、パソコンや高額の教材を買わせる。しかし、実際はほとんど仕事がない、という悪質なケースがあった。このような事例は以前、横行したいわゆる「内職商法」などだ。このため、特定商品取引法においてこのした商法が規制されるようになった。

 海外旅行に関して言えば、パソコンや教材のかわりに、旅行の出費という「負担」をさせるのが本件での「商法」と判断される。


<規制の内容は?>

 「特定商品取引法」は、消費者保護のための法律で、事業者は契約の相手方に対し、契約の内容を明らかにする「概要書面」を交付しなければならない。また、「業務の内容」、「業務提供利益の全部または一部が支払われないこととなる場合がある時には、その条件」を書面で明示しなければならない。また、広告、仕方にも細かい規制がある。

 つまり、確実に収入が得られるのか否か事前にはっきりさせなければならず、後から「期待されたほどの収入が無かった」ということが発生しないようにしなければならない。クーリングオフ制度が適用されることも当然のこと。解約ができる期間は20日間である。また、「不実の告知」や「故意による事実の不告知」の場合は、契約自体を取消せる。

 さらに行政処分として違反業者に対しては、主務大臣、主務庁から是正のための「指示」が出されることもあり、悪質であれば「業務停止」もあり得る。されには刑事罰も用意されている。

 現代社会では、消費者保護規制に対する違反に対しては厳しい処分が用意されていることを忘れないでほしい。


<解決方法>
 「留学商法」と言っても、被害額は、数十万円程度が普通である。この額では、訴訟はコストがかかり過ぎるので、ADR(裁判外紛争処理機関)が必要となる。現在は各地の消費者保護センターがこのADRの役割を果たしている。




   =====< 法律豆知識 バックナンバー>=====

第105回 バスの中で盗難にあった場合の責任は

第104回 「白バス」乗車で事故発生の責任

第103回  フライト・キャンセルからの紛争・解決に向けた提案(4)

第102回  フライト・キャンセルからの紛争(3)

第101回  フライト・キャンセルからの紛争(2)


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※本コーナーへのご意見等は編集部にお寄せ下さい。
編集部: editor@travel-vision-jp.com

執筆:金子博人弁護士[国際旅行法学会(IFTTA)理事、東京弁護士会所属]
ホームページ: http://www.kaneko-law-office.jp/
IFTTAサイト: http://www.ifta.org/