JTB、上期決算で売上2.2倍、国内・MICEなど好調-海外旅行商品は他正面作戦へ
JTBが11月18日に発表した2023年3月期上期(2022年4月1日~2022年9月30日)の連結業績で、売上高は国内旅行需要の回復傾向やMICE、BPO受託などが牽引し前年比115%増の3863億円となった。売上総利益も75%増の923億円。営業損益は47億円の赤字ながら前年より284億円改善し、同じく経常損益も238億円改善して22億円の赤字となった。純損益は、前年は本社ビルの不動産売却などで311億円の特別利益を計上していたため黒字だったが今年は29億円の赤字となった。
上半期連結業績推移
項目 | 19年度 | 20年度 | 21年度 | 22年度 |
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売上高 | 6,860億円 | 1,298億円 | 1,798億円 | 3,863億円 |
営業損益 | 64億円 | -711億円 | -331億円 | -47億円 |
経常損益 | 69億円 | -580億円 | -260億円 | -22億円 |
純利益 | 44億円 | -782億円 | 67億円 | -29億円 |
国内や海外MICEなど好調、構造改革は一段落
上期は国内旅行が行動制限の緩和で個人、団体ともに大幅きく伸びたほかMICEやBPOなど旅行以外の事業も取り扱いを拡大しており、さらに構造改革によって経費増の抑制にも成功。国土交通省での記者会見でJTB代表取締役社長執行役員の山北栄二郎氏は「純利益は黒字に及ばなかったが業績は大幅に改善した」などと手応えを語った。MICE分野では、一例として回復の先行する米市場のMICEを専門とする子会社MC&Aでは過去最高の取り扱いを記録している。
また構造改革では、国内外の子会社や拠点の整理、人員削減、システム刷新、働き方改革などを実施。2020年と比べて売上高が1298億円から3863億円へと3倍近く拡大した一方、営業経費は1043億円から969億円へと削減した。こうした構造改革はこれまでの施策で一段落と捉えており「ここから極端に踏み込むことはない」ものの、「さらに取り組んでいかなくてはいけない項目。状況に合わせて見直す」とも語った。
通期予想は売上引き下げも黒字化は見直さず
通期では、全国旅行支援や水際対策緩和が想定より遅くなったこともあり売上高は当初計画をやや下回ると予想しつつ、63億円の営業利益の達成は引き続き可能と見ており、「旅行需要の回復と旅行以外のビジネスの積み上げにより当初計画の営業利益63億円の達成と通期最終利益を見込んでいる」「2019年度の利益水準を回復する見通し」とした。第8波や地政学リスクなどの下振れ要因も基本的には織り込んでいる。
下期の旅行取扱額について国内、訪日、海外それぞれの2019年比での回復率を見ると、国内は上期が39.6%減だったところから6.0%増とプラスに転じ、訪日も90.0%減から55.7%減に回復。一方、海外は旅行代金の高騰や円安もあり下期でも90.0%減を想定する。
成長戦略では、引き続き「ツーリズム」「エリアソリューション」「ビジネスソリューション」の3事業と「グローバル」の領域で取り組みを進め、グローバルでのMICEやデスティネーションマネジメント、DX支援、サステナビリティ強化などに注力していく。DX支援では、積年の課題だった交通渋滞を事前予約システムの導入により解消するなどして世界のサステナブル観光地100選に選ばれるなど実績も残せているという。
海外は「DP」「添乗員付き」「高価格帯」商品揃え多様な客層に対応へ
国内や訪日に比べて見通しが暗い海外旅行だが、JTBはさらにダイナミックパッケージ(DP)への注力などもあって業界内での動揺が見聞きされるところ。会見では商品構成の見直しなどについても質問が出たが、山北氏は市場の回復率が10%から20%の段階では「需給バランスや航空座席供給の見通しなどを読みづらく、判断するには早い」と回答。その上で、現時点では自由度の高いDPの利用は今後増えていくとの予想のもと引き続きDP戦略を推進していくとした。
一方、「企画性の高いエスコート型商品もきっちり作っていきたい」と語り、組織改編を含めて「マーケットセグメントに応じた旅行を作っていける」体制の実現を目指す。組織については現在は「いろいろな形で商品造成をしている」が、「一元的にお客様の管理ができるものだったり、そういうことができるような体制」を目標とするという。
そして、DP、エスコート型商品と並んでロイヤルロード銀座のような富裕層を中心とした高額商品にも注力。これら3つの商品群によって「マーケットセグメントに応じた旅行を作っていけるような商品体系」を実現したいと語り、各客層に正対してそれぞれに合った商品を提供していく考えを示した。
なお、海外旅行市場のコロナ前の状況への平常化は2年から3年を要するとの分析。来年度の海外旅行需要は市場全体で2019年の60%まで回復すると見ているという。