19年春闘、一部で交渉難航も成果、「出張+休暇」の制度化も

(左から)副会長の山口智洋氏、会長の後藤常康氏、事務局長の千葉崇氏、副会長の齋藤隆氏 サービス・ツーリズム産業労働組合連合会(サービス連合)は4月3日に記者懇談会を開催し、春季生活闘争の状況を報告した。3月31日時点で要求書を提出済みの加盟組合は95組合で、うちベースアップなどの実質的な賃金改善を要求したのが72組合、最低保障賃金の協定化を要求したのが46組合。昨年と比べるとそれぞれ20、17、20組合少ない計算となるが、これは企業の組織再編などで組合数が減ったことが影響したという。

 一方、3月31日までに合意した組合の数も33組合で昨年から16組合減っているが、こちらについては会長の後藤常康氏が「なかなか回答を引き出せない状況が続いていた」と説明。人材確保に向けた待遇改善の必要性などについては労使双方で認識を共有できていつつも、経営環境への危機感などから、例えばホテル・レジャー系企業では「賃金改善への慎重な姿勢が根強い」(副会長の齋藤隆氏)という。

 ただし、後藤氏は合意済みの組合では満額回答も多いと説明し、「成果は十分にあった」とコメント。具体的に賃金改善の回答を得た組合は19組合で、昨年よりも12組合少ないものの、若年層に対する賃金引き上げの回答を引き出した組合も出てきているという。

 こうした成果について後藤氏は、「労働集約型産業として、人にしっかり投資をすることが人口減少社会における産業を持続可能に発展させるうえでも重要」と語り、そのうえで「懸命な労使交渉によって一定の成果が出てきている」と分析。また、「数字では表れないが、来年、再来年につながる交渉を続けてきてくれている」と評価した。

 また、一時金について集計が完了して昨年と比較可能な組合を平均すると、夏については24組合で1.51ヶ月分となり、前年から0.03ヶ月増。年間で合意した18組合は前年と変わらず3.22ヶ月であった。

 部門別のうち、旅行会社系組合は夏が6組合平均で1.47ヶ月、年間が2組合で3.95ヶ月といずれも昨年と変化なし。ホテル・レジャーでは、夏が14組合で平均1.46ヶ月(0.07ヶ月増)、年間が13組合で2.87ヶ月(0.07ヶ月減)となった。

 なお、副会長の山口智洋氏によると、旅行会社の労使交渉では最低保障賃金に関する交渉が年齢や地域によって争点化しているところ。一方、賃金以外では勤務間インターバルや労働時間の短縮、有給休暇の取得促進も要求項目となっており、会社によっては出張に休暇を組み合わせる「ブリージャー制度」の設定で合意したケースも出てきているという。