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JTBが新事業、高齢者の地方移住を促進、まずは岡山県

  • 2018年1月25日

(左から)JTBの高橋氏、古野氏、玉野市長の黒田氏、宇野港土地代表取締役の宮原一郎氏 JTBは1月25日、新たな事業として官民連携の「日本版CCRC(Continuing Care Retirement Community)」に取り組むと発表した。都市部の高齢者の地方移住を促進するとともに、移住者の社会活動への参画を促すことで地域活性化をめざすことがねらい。第1弾として岡山県玉野市と協力し、各種ヘルスケアサービスの開発、ツアーや現地発着プランの造成、人材育成などに取り組む。2020年度までに100人の移住をめざす。

 JTB執行役員法人事業部長の古野浩樹氏は同日の記者会見をおこない、今回の事業が同社が推進する地域交流事業の一環であることを説明した上で「定住人口の減少を交流人口で補う。地域活性化につなげたい」と語った。

  JTBは新たな取り組みに向け、同日にはヘルスツーリズムなどのヘルスケア事業のブランドとして「JTBヘルスケア」を創設。同ブランドのもと、20年度までに約30の市町村と「日本版CCRC」で協働する考えで、ヘルスケア事業全体の取扱高は、17年度見込比2.8倍の7億円をめざす。同社は現在、玉野市の他にも2つの自治体と日本版CCRCでの協働に関する検討を進めているという。

 「CCRC」は米国で提唱された概念で、本来は高齢者が健康なうちに施設に入居し、人生最期の時を過ごす「生活共同体」を指す。これに対し「日本版CCRC」は、政府が15年12月に「生涯活躍のまち構想」として掲げたもので、首都圏など都市部の高齢者が元気なうちに地方に移り住み、地域住民と積極的に交流しながら健康な生活を送り、必要に応じて医療や介護を受けられる地域づくりを官民連携でめざすとしている。

「JTBヘルスケア」のロゴマーク 玉野市は人口約6万人で「瀬戸内国際芸術祭」の会場の1つとなっていることなどで知られる。記者会見で玉野市長の黒田晋氏は「玉野らしさを追求したCCRCとして、高齢者に加えて若者が軸になる新たな街づくりをおこない、共生社会の推進をはかる」と説明。「地域資源・人材をフル活用し『我々が生涯活躍のまちのトップリーダーにならずしてどこがなる』くらいの気概を持って進めたい」と意欲を示した。

 同市は昨年6月、日本版CCRCの推進に向けた官民連携事業の推進主体として、JTBと玉野市で不動産賃貸業や温泉事業などを展開する宇野港土地の2社を優先交渉権者に決定。これを受けて両社は共同で一般社団法人の玉野コミュニティ・デザインを設立し、玉野市と基本協定を締結して事業の実施に向けた準備を進めてきた。

 今後は2月上旬にかけて、県内外から参加者を募り、1泊2日のモニターツアーを2回実施する予定。「海洋・温泉療法型たまの健康増進プログラム」として、宇野港土地の子会社が運営する「瀬戸内温泉たまの湯」での入浴、競輪場でのサイクリング、宇野港周辺のウォーキング、渋沢海岸でのビーチヨガなどを組み込み、各回10名程度が参加するという。ツアーの結果を踏まえてパッケージツアーや現地発着プランなどを造成するほか、企業向けの福利厚生プログラムの体験素材としての提供も検討する。

 また、同市の資源を温泉療法などで利用する仕組みを構築。健康食の開発、ヘルスツーリズムのための人材育成にも取り組む。JTBヘルスツーリズム研究所長の高橋伸佳氏(※高ははしご高)によれば、入浴施設と運動施設の利用を組み合わせることで、所得税の医療費控除を受けることができる政府の「温泉利用型健康増進施設制度」を活用してサービスを展開するという。