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週間ランキング、1位はジャパネット、アップルワールド買収も

[総評] 今週の1位は、ジャパネットホールディングスが旅行関連の新会社を設立した記事でした。設立直後ですので深い情報をお届けできたわけではないのですが、その抜群の知名度から業界内の関心が高いものと思われます。

 今週はまた、求人情報サイトなどを運営するじげんがアップルワールド・ホールディングスを100%子会社化した記事も2位にランクインしており、最近は他業種からの参入が目立ちます。もちろん各社とも勝算があるから入ってきているはずですが、もしかするとそれだけでなく旅行の持つ根本的な魅力のようなものが評価されているようにも感じるところです。

 ジャパネットは、自社の強みである販売力と親和性の高い商材という発想で旅行業にたどり着いたのではないかと勝手に想像していますが、それが的を得ているかはさておき、販売戦略は確実にジャパネットの成功体験をもとにしています(インタビュー:ジャパネットホールディングス執行役員の茨木智設氏)。

 これに対してじげんは、もちろんこれまでの強みを活かすのは間違いないはずですが、アップルワールドという歴史あるB2Bプレーヤーを買うという決断をしており、この点は非常に大きく異なります。発表ではB2Cにも力を入れていく方針が示されていますが、B2Bの既存顧客目線で考えればありがたい話ではなく、どのような青写真を描いているのか気になります。

 もちろん、例えばExpediaもExpedia Affiliate Networkを通してB2B事業を展開していますし、どちらかに振り切らなければならないというわけでもありません。考えてみると、航空会社がCRS(GDS)子会社を維持するケースも似たようなところがあり、経営資源をどこに配分するかの判断次第ということでしょう。旅行業界が力を持つうちは付き合っておく、というのは心情的には荒んだ気持ちになる考え方ですが、当然といえば当然です。

 とはいえ、感覚としては今ある販売力はもう少しきちんと評価されてもいいのではないかと思います。個人的に、問題のひとつは旅行会社の力が計算しにくいところではないかと考えており、このあたりがテクノロジーの進化などによって改善されれば見直される動きも出るでしょう。

 オンラインの世界であれば、バナーをどこに何回表示するのに費用はいくらで、結果として何人くらいがそれをクリックし、そのうちの何人がランディングページで購買などの行動をしてくれるか、トータルで費用対効果はいくらか、といった計算がしやすいわけで、しかも表示するウェブサイトやバナーのデザイン、ランディングページの内容などを調整することで、効率を高めていくことが可能なわけです。

 例えば、ある支店のカウンターに今お客様がいらっしゃるとして、その方に自社プロダクトを紹介してくれるのであれば進んで対価を支払う、というようなサプライヤーはきっとあるでしょう。お客様の意に反するものを勧めるのはあまり良くないかもしれませんが、それであれば来店された方の背格好や時間帯、服装、年齢層、表情、手に取ったパンフレットなどに応じて紹介するものを変えるのはどうでしょうか。あるいはデジタルサイネージを使い、お客様に合わせた広告をお見せするのもいいかもしれません。

 もしもB2B2Cの分野にこういった即効性や柔軟性、計測可能性を導入できれば、きっと新しい世界が見えてくると感じますし、ネットと店舗の融合に関する研究は諸産業で進んでいますから、異業種からそんな分野への参入があってもなんら不思議ではありません。

 ところで、今週は一般メディアでてるみくらぶ事件捜査の進展がいくつか報じられました。また、先日には振袖レンタル業者が成人式当日に営業を停止して多くの被害者の姿が報じられていますが、楽しく喜ばしい時間を台無しにする様がてるみくらぶの悪行に似通い、既視感を覚えた方も多かったのではないでしょうか。

 4月1日に「海外ツアー適正取引推進委員会」の通報窓口が開設されるまであと数ヶ月となりましたが、二度とあのようなことのないよう積極的に活用されることを願ってやみません。もちろん、本来は業界の自浄作用のみで防止できることが理想であるのですが。(松本)

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