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「新たな通訳案内士制度」検討会が初会合、試験や研修など議論

観光庁の加藤氏  観光庁は6月2日、「新たな通訳案内士制度のあり方に関する検討会」の初会合を開催した。同検討会は2014年から16年にかけて開催した「通訳案内士制度のあり方に関する検討会」に続くもので、5月下旬に成立し、6月2日に公布した改正通訳案内士法について、新たな制度下での試験や研修のあり方などについて具体的な検討を進めることが目的。この日は事務局が改正通訳案内士法の概要を説明したほか、新制度下での通訳案内士に関する基本方針や試験・研修の内容、研修機関の要件など、制度設計に向けた政令やガイドラインなどの制定のための主要な検討事項を示した。

 冒頭で挨拶した観光庁観光地域振興部長の加藤庸之氏は、改正通訳案内士法が2日付で公布されたことから、公布日から9ヶ月以内の2018年3月1日までに施行しなければならない旨を説明。その上で「60年ぶりの大改正であり検討すべき点が多いが、しっかりと制度を作り上げていきたい」と述べ、委員には迅速かつ活発な議論を呼びかけた。

 会合ではまず、事務局が改正通訳案内士法の概要を紹介。今後は業務独占資格から名称独占資格への変更や、定期的な研修制度の導入に加えて、「全国通訳案内士制度」以外にさまざまな法律で設けられていた「特例ガイド」を一本化して「地域通訳案内士制度」を創設することなどを説明した。加えて、今後の議論の参考として、同法の成立にあたっては衆参両院から新制度の周知や通訳案内士の就業環境の整備、受講しやすい研修制度の設計などを求める付帯決議がなされたことなども伝えた。

 これらを踏まえて事務局は今後、「政令・省令」および「告示・通達・ガイドライン」を定めるための主な検討事項を提示。改正法の施行期日のほか、通訳案内士に関する基本方針、試験や研修の内容と実施方法、研修機関に関する要件などを挙げた。また、政令などとは別に、試験委員の確保や受験者の増加に向けた方策、美術館や博物館での入館料などの優遇措置、外国人の活用、統一的な団体の創設なども検討すべきとした。

 こうした検討事項に対して、委員からは改めて通訳案内士の質の担保の重要性を強調する声が多く挙がった。旅行業界からはJTBグローバルマーケティング&トラベル取締役の吉村久夫氏が「旅行予約のオンライン化が進む中で、(旅行者と通訳案内士の)個人同士での手配も増えてくる可能性があるので、悪質ガイドを利用しないよう有資格者の情報などはしっかりと公開すべき」と発言。日本旅行国際旅行事業本部海外旅行部副本部長の久野勝己氏は、「有資格者と無資格者を価格重視で判断する業者が出てくると問題なので、有資格者を活用する意義やメリットについては日本の旅行業者だけでなく、訪日旅行を手配する海外の旅行業者にもしっかりと周知していただきたい」などと要望した。

 日本観光通訳協会会長の萩村昌代氏は、吉村氏などの意見を受け「悪質ガイドと言ってもさまざまな解釈ができるので、単に日本の慣習について知らなかっただけの外国人ガイドが悪質ガイドと判断されてしまう恐れがある」と述べ、悪質ガイドの定義付けの必要性を指摘した。日本文化体験交流塾理事長の米原亮三氏は「観光のオフ期などにガイドの仕事がなくて辞める人もいるので、全国に約2万人いるガイドが継続して仕事が得られる仕組みづくりの検討をお願いしたい」と主張。これに対し、日本旅行業協会(JATA)国内・訪日旅行推進部長の興津泰則氏は「訪日外国人のニーズがモノ消費からコト消費に変わっている今、活躍の機会は(十分に)あるのでは」と語り、「観光分野では例えば、修学旅行でスキーをしに訪れた外国人学生を案内できる人材がいないという自治体もあると聞く。また、DMOの活動などにも関わっていけるのでは」などの考えを示した。

 今後は、早期に検討すべき項目として「登録研修機関の要件」「既存の有資格者の研修内容」「地域通訳案内士の育成などの基本方針」について、9月までに3、4回程度の会合を開催。9月以降は「通訳案内士の情報検索システムの運用」「通訳案内士の認知度向上の方策」「就業状況などの実態把握」などについて、施行まで間に4回から5回程度検討する。そのほか、「新たな言語の追加、受験者の拡大方策」「全国通訳案内士の定期研修の内容」「試験の実施方法と内容」「悪質ガイド対策」などについては、今年度内をめどに方針を取りまとめる考え。なお、試験や研修の内容については、検討会の下に作業部会を立ち上げ、実態調査と検討を進めるという。第2回会合は6月30日に開催する。