年頭所感(1)17年は観光先進国化、さらなる海旅復活の1年に

  • 2017年1月5日(木)

2016年のツーリズムEXPOジャパン  2016年は年間訪日外国人旅行者数が初めて2000万人を突破したほか、JATAなどが「復活」に向けて取り組みを進めた海外旅行も出国者数がプラス転換。国内旅行では九州地震などの自然災害が続いた一方で、「九州ふっこう割」など観光による支援策が奏功するなど、17年への希望を感じさせるニュースも多かった。

 今年はオリンピックや新幹線開通などの大イベントはないものの、20年の東京オリンピック開催を契機に政府がめざす「観光先進国」の実現に向けた大事な1歩を踏み出す1年となる。観光庁や日本政府観光局(JNTO)、日本旅行業協会(JATA)などの業界団体、大手旅行会社や航空会社のトップによる、年頭所感の要旨を紹介する。

※旅行会社の順序は観光庁による16年度上期主要旅行会社50社の総旅行取扱額順


▽観光庁長官 田村明比古氏

 2016年は訪日外国人旅行者数が通年で初めて2000万人を超え、2400万人前後になったほか、消費額も4兆円が視野に入るなど、訪日旅行が引き続き堅調に拡大した年となった。日本人の旅行については国内・海外ともに15年比で増加するなど明るい兆しが見え、熊本や鳥取中部での地震、北海道に上陸した台風などが観光に大きな影響を及ぼしたが、「九州ふっこう割」などの支援プロジェクトを迅速に実施したことで、旅行需要を回復させた。

 16年3月に政府は「明日の日本を支える観光ビジョン」を策定し、20年の訪日外国人旅行者数4000万人、消費額8兆円など新たな目標を掲げた。「観光先進国」の実現に向けた取り組みはすでに開始しているが、17年は観光ビジョンを本格的に形にしていく年になる。

 観光ビジョンの具体化に向け、17年は民泊新法や通訳案内士法と旅行業法の改正法案を通常国会に提出する。また、観光MBAの創設など人材を育成・強化し、歴史的資源を活用した観光まちづくり、世界水準のDMOの形成にも取り組む。あわせて、欧米豪や富裕層などへの戦略的なプロモーションの展開による長期滞在化と消費の拡大、関係省庁との連携による受入環境の整備なども進める。

 17年は、我が国がもともと有していたポテンシャルで飛躍してきたここ2、3年と比べて、20年の目標達成に向けた正念場となる年になるだろう。観光庁を含めて政府全体で、できることは何でもやるという意気込みで取り組みを進めていくので、観光関係者や国民の皆様にもご協力いただきたい。


▽日本政府観光局(JNTO)理事長 松山良一氏

 2016年は、「明日の日本を支える観光ビジョン」のなかで20年、30年に向けた数値目標と方針が策定されるなど、インバウンド観光が日本の基幹産業の1つとして改めて認知されるとともに、さらなる責任が示された年だった。JNTOはビジット・ジャパン事業の中核を担う政府観光局として、「東北の観光振興」の推進に向けて日本初の全世界を対象としたデスティネーションキャンペーンを実施したほか、長期滞在者が多く消費額も高い傾向にある欧州15ヶ国を対象とした大規模な訪日促進キャンペーンも開始した。

 17年は引き続き、海外事務所を中心に「地方への誘客」「質の向上」に向けた事業を企画・実施し、マーケティングの高度化をはかりつつ、現地目線の効果的なプロモーション活動をおこなう。

新たな市場の開拓については、欧米豪、富裕層、訪日教育旅行の活性化による若年層の取り込みに注力する。また、新設する海外7事務所の現地ネットワークとプロモーションの充実・高度化にも取り組む。MICEについても、アジアで1位の国際会議開催件数を維持するための取り組みを継続していきたい。


▽日本旅行業協会(JATA)会長 田川博己氏

 2016年は「観光立国」から「観光先進国」への道筋を描き出す節目の年だったが、17年は「観光先進国」をめざすとはどういうことか、ツーリズム産業はどう変わっていくべきなのかを明らかにしていく。今年は昨年のオリンピックや新幹線開業のような大型イベントがないので、「マーケットを動かすために仕掛ける」を念頭に、旅行会社の価値の「見える化」をはかり、真価を発揮する年にしたい。

 JATAの事業である「ツーリズムEXPOジャパン」は、16年までの3年計画でツーリズム産業の現状や取り組みの見える化をめざしてきた。17年からは第2ステージとして観光産業全体で盛り上げ、日本がアジアの観光リーダーとなるにふさわしいBtoBを意識したイベントにしたい。

 16年は「海外旅行復活」をめざした結果、渡航者数は5%程度伸びる見込みであるものの、旅行会社の取り扱いの伸び率にばらつきがあった。17年は引き続き「海外旅行復活」に向けて、企画力・提案力・添乗力など旅行会社の価値を改めて市場に問う必要がある。

 訪日外国人旅行者数が2000万人を超えたことで、17年は日本人と訪日外国人の旅行需要をあわせて、観光による地方創生を実現させたい。地域観光の担い手として期待がますます大きくなる、DMOの育成に旅行業が果たす役割は大きいだろう。また、リピーター増加のために「ツアーオペレーター品質認証制度」を活用するほか、ランドオペレーターやシェアリングエコノミーの問題にも積極的に関与していきたい。


▽日本外航客船協会(JOPA)会長 山口直彦氏

 世界のクルーズ事業環境は大きく変化している。中国市場には世界の主要クルーズ会社が続々と参入し、欧州市場はリバークルーズに注力する会社が増えた。日本では外国船社の日本発着クルーズが増え、全国でクルーズへの関心や期待が高まってきた。日本のクルーズ人口も4年連続で20万人を超える水準で推移した。

 日本船は昨年、「飛鳥II」の日本一周クルーズ、「ぱしふぃっくびいなす」の「皆既日食・グアム・小笠原クルーズ」、「にっぽん丸」によるフライ&クルーズ商品など意欲的な商品を提供したほか、テーマクルーズなども目立ってきた。旅行会社も積極的にチャーターを実施しており、こうした取り組みはクルーズの認知度向上や市場の裾野の拡大に大きく貢献している。

 クルーズは体に優しく、費用対効果の高い旅行としてメディアに取り上げられる機会が増えた。当協会では今年も客船の見学会やセミナー、日本船クルーズが当たるクイズキャンペーンなどを通し、日本船の魅力を消費者に訴求し、新たなファンの創出に努める。

 クルーズ・コンサルタント資格取得者の数は昨年で累計6600人以上となった。今後も有資格者1万人時代に向け、制度の一層の円滑な運用をはかりたい。

 一方、国際定期旅客船は日本人の減少に歯止めがかからず、依然として厳しい環境だ。近隣諸国との間を高速で結ぶ国際フェリーは身近な旅行手段なので、一刻も早い事業環境の改善が望まれる。


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