観光庁、17年度概算要求は5割増の374億円-ビジョン具現化へ

  • 2016年8月30日

▽新事業で民泊推進など、酒蔵での免税も要望

 もう1本の柱の「観光産業の革新と国際競争力の強化」では、新たに「健全な民泊サービスの普及」として1億3400万円を、「旅行業における情報セキュリティの強化支援事業」として3100万円を要求する。民泊サービスについては今年度中の法案提出をめざす新たな制度への対応として、宿泊の提供を始めたい人や近隣住民のための相談窓口を設置。情報セキュリティについては、先般のジェイティービー(JTB)などによる情報流出事案を踏まえ、旅行業者間で情報を共有するためのウェブサイトの開設や、旅行業界向けガイドラインの策定支援などをおこなう。

 また「通訳ガイド制度の充実・強化」に156%増の5000万円を要求。通訳案内士の有償案内業務の独占廃止に向け、次期通常国会に法案を提出する予定にともない、制度改正後の通訳案内士の品質確保に向けて事業を拡大する。具体的には新試験問題の検討、実務マニュアルや研修教材の作成などに取り組む。

 16年度からの継続事業としては、「観光人材育成支援事業」で7%増の3億9100万円を要求。観光産業を牽引するトップレベルの経営人材育成に向けて、18年度を目途に「観光MBA」の創設をめざすほか、ホテルの経営者やDMOのための人材、現場で即戦力となる人材の育成などに取り組む。

 訪日外国人旅行者向けプロモーションに関しては「国と地方の連携によるビジット・ジャパン事業」で20%増の15億円を、「MICEの誘致の促進」で19%増2億3800万円を求めた。さらに、今年度からは「日本政府観光局(JNTO)運営費交付金」を「JNTOによるビジット・ジャパン事業」という項目に変更。42%増の100億円を要求した。100億円のうち64億6000万円を「優先課題推進枠」とし、人件費などを除いたプロモーションなどの事業費に充てるという。

 最後の柱である「地方創生の礎となる観光資源の魅力向上」では、15年から展開する「広域観光周遊ルート形成促進事業」で21%増の19億9000万円を要求。また、「観光地域ブランド確立支援事業」で16年度と同額の2億5200万円、「観光資源を活用した観光地魅力創造事業」で49%増の4億4000万円を求めた。16年度から新設した「テーマ別観光による地方誘客事業」については、72%増の1億2000万円を計上した。

 なお、17年度の税制改正要望としては、消費税が免税となる「輸出物品販売場」の許可を受けた酒蔵で訪日外国人旅行者に酒類を販売する際に、消費税に加えて酒税も免税とする制度の創設を求めた。今年6月に閣議決定された「日本再興戦略2016」における「クールジャパンの推進」を踏まえたもので、外国人に向けて地方における「酒蔵ツーリズム」の振興、日本産酒類の認知度向上、輸出促進をはかる。

 そのほかには組織要求として、宿泊業の活性化などに向け、受入環境整備を促進するための体制を要求した。具体的には観光産業課内に、宿泊産業に特化した対策室を新設したい考え。人員数についてはこれから検討するという。