HIS澤田会長のアジア戦略、大旅行時代への対応-新航空会社の可能性も

  • 2012年4月5日

 エイチ・アイ・エス(HIS)代表取締役会長の澤田秀雄氏は、旅行業界の勉強会「十人会」で「地球の歩き方」創業者の西川敏晴氏と、「大旅行時代の新たな動きと変化するマーケット」をテーマにトークショーを開催した。澤田氏はアジアでの展開を重視する方針を披露し、チャーターの活用戦略や新航空会社設立の可能性について言及。2月末に就航したHTBクルーズではアジア全域への配船も睨む。HISの今後の戦略を、トークショーの内容から探る。


競合相手はアジア全体
収益でグローバル市場が日本市場を抜く

 澤田氏は旅行業界の今後について「アジア大航海時代が始まっている」と説明。日本市場は重視するとしながらも「これからは間違いなくアジアの時代。アジア市場を見据えないと勝ち抜いていけない」と、アジア市場での展開を重視する方針を示した。アジア市場で各国の経済成長に伴い旅行需要が高まる一方、日本市場では少子化もあり「今までのように数字が伸びない」と見る。HISでも「グループ全体の利益の3分の1は世界で稼いでおり、3年から5年で日本の利益を抜くのでは」との予想だ。

 すでにHISではタイのバンコク支店にスタッフを300人配置し、タイ市場の需要拡大に取り組んでいる。昨年から開始したタイへの定期チャーター便についても、日本からが6割から7割、タイからが3割で推移。タイのインバウンド需要も確実に取り込んでいる。

 また、澤田氏はインターネットの発達で予約システムなどの自動化、効率化が進むなか、次の段階としてスマートフォンの利用者が拡大し、「画期的な変化が起ころうとしている」と指摘する。アジアではコンピュータは一般レベルまで普及していないが、スマートフォンはほとんどの人が持っているといい、「“インターネット+スマートフォンの大変化の時代”と“アジア大航海時代”で、大きなチャンスがやってきた」と見る。

 ネット系旅行会社が存在感を増すなか、エクスペディアのもつ売上力やシステム力は脅威と考えており、「システムで勝ち抜けないと欧米やアジアでの競争には勝てない」としてシステム開発を強化。システム要員として100名以上の人員を投入しており、現在も新システムの開発を進めているという。

 澤田氏は「数年前まではJTBが競合だった」が、「今はアジア全体の競争を見ている」とアジアでトップの旅行会社をめざす姿勢を強調した。同様に「アジアでNo.1」を掲げる楽天トラベルに対しては、HISが培ってきた海外ネットワーク、仕入力の強さを利点としてあげ、「(楽天トラベルは)国内旅行は強いが、HISは海外では負けないようにしたい」と述べた。