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LCCの急拡大とその効果、日本版LCCの可能性も

  • 2011年10月21日
会場内の様子

 ピーチ、エアアジア・ジャパン、ジェットスター・ジャパンが相次いで日本版LCCの設立を発表し、高い注目を集めている。各社は「最低価格」など低価格を武器に市場の開拓をめざており、市場に大きな変化をもたらすことは確実。しかし、長い間LCCが根付いてこなかった日本で、どのような変化が起きるかは未知数だ。このほど運輸政策研究機構国際問題研究所が開催したセミナーでは、ピーチやジェットスター(JQ)の代表者らが登壇し、日本でのLCCのあり方などについて議論した。そもそもLCCとは何か、日本ではどのようなビジネスを展開するか、そして旅行市場へのインパクトは――。セミナーとパネルディスカッションの様子から2回に分けて伝える。


▽「LCC」とは何か

 セミナーでは、同研究所所長の鷲巣誠氏がLCCを取り巻く現状について説明した後、ジョージ・メイソン大学公共政策学科教授のケネス・バトン氏、JQグループCEOのブルース・ブキャナン氏、ピーチ・アビエーション代表取締役CEOの井上慎一氏、セントラルフロリダ大学ホスピタリティ経営学部副学部長の原忠之氏が順に基調講演を実施。その後、パネルディスカッションでは、一橋大学大学院商学研究科教授の山内弘隆氏をモデレーターとし、基調講演をおこなった4名がパネリストとして登壇した。

 バトン氏によると、「LCC」と一言でくくっても実際には多様なビジネスモデルが展開されているが、一般的には、「短距離路線」「機材の統一」「拠点空港を中心とした放射状の路線」「現金払い」「セカンダリー空港の使用」といった特徴を備える。また、鷲巣氏は「資産である航空機の有効活用(1日あたりの飛行時間の増加)」「1機あたり座席数の増加、“フリルサービス”(追加的なサービス)の排除ないし販売」「直販重視」「労働生産性の向上」を、フルサービスキャリア(FSC)との差として指摘した(下表参照)。




 世界規模で見て、LCCは急速な発展を遂げている。鷲巣氏によると、世界全体の座席供給量に占めるLCCの割合は、2001年には8.0%であったものが、2010年には23.0%にまで拡大。主に欧米から浸透しはじめ、アジア太平洋地域では2001年が地域全体の1.1%、2003年が2.4%と緩やかに伸びた後、2004年の4.5%から急拡大し、2010年には17.6%に達した。

 ブキャナン氏のJQも、2004年の創業時には14機を保有するのみであったが、2011年度末には86機に増加し、さらに170機の航空機を発注済み。現在は6社のグループ会社からなり、過去1年間で20路線を新設するなど積極的な展開を続けている。ジェットスター・ジャパンも、初年度に100名、数年内に800名の採用をめざす方針だ。