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体験レポート:バリマラソン、女性ランナーにアピール度大のリゾート

  • 2011年2月18日
 女性の間でマラソンブームとなって久しい。国内ではもちろん、海外へマラソンを目的に「ラン旅」をする人も増えているという。本格的なレースマラソンに参加する人も多いなか、「ただ楽しく走れれば」というリゾートマラソンも人気。そのなかでも、女性に人気の高いバリで今年3回目を迎えたバリ国際マラソンは、海外マラソンの新規デスティネーションとして注目だ。
                          
    
    
                                      
女性を中心に高まるマラソン人気と、はまる理由

 女性ファッション誌が火付け役となり、数年前から働く女性のマラソンブームが起こっている。美容と健康のために、特にお金をかけなくてもスニーカーさえあれば気軽にはじめられるスポーツだが、スタイリッシュなマラソンウェアや高級ブランドのスポーツサングラスなども発売され、いまやひとつのテーマ市場ともなっている。

 とことんはまる人はコーチをつけて日ごろから練習を重ね、海外のマラソン大会でその成果を試す。毎年同じ大会に出場してタイムを上げることを目標にしたり、次々に新しいデスティネーションに挑戦したりといった「ラン旅(走ることを目的にした旅)」リピーターのほか、普段から走っている人でなくても、海外マラソンに参加する女性もいる。そのきっかけを何人かに尋ねてみると、「○歳になったから」「結婚する前の最後の思い出に」といったように、なんらかの記念や区切りという答えが聞かれた。

 このように、マラソンは「達成感を得る」「いつもとは違う体験をする」といった目的で気軽に参加できる現地アクティビティとして捉えることもでき、その場合はマラソンの前後にできるアクティビティの充実もデスティネーション選びの目安になるだろう。また、女性はひとりで走るのは不安だからと同性の友人を誘うケースが多く、その際に誘われた友人がマラソンの魅力に目覚めるということもある。友人同士で参加したとはいえ、走るときは真剣に、お互い上位入賞をねらうという本格的なランナーも少なくない。ひとりで走る孤独なスポーツと見られがちだが、海外マラソンでは一緒に参加する人がいることも、参加するモチベーションのひとつになっている。


リゾートならではのリラックス感
海外マラソンデビューにも


 2010年のバリ国際マラソンの参加者は総勢約1500名で、うち日本人は現地在住者を含め180人ほど。1回目の2008年は118人、2回目の2009年は158人と、着々と日本人参加者、それも日本からマラソンのためにバリ島を訪れた人が増えている。

 参加者に話を聞くと、親子で、友人同士でと組み合わせはさまざまだ。昨年も参加したというリピーターもいる。有名どころのシティマラソンと比べ、リゾートだからこそ気軽にリラックスして参加できると考えている人も多いようだ。海外マラソンデビューの足慣らしとしてバリマラソンに参加してみるというのもいいかもしれない。

 大会前日の16日、エントリー手続きと前夜祭にあたるパスタ・パーティが開催された。インドネシアに縁のある日本人アーティストの東田トモヒロさんなどがステージ上でパフォーマンスを披露したほか、準ミスインドネシアのビビアンさんや2009ミスユニバース・ジャパンの宮坂絵美里さんが挨拶をしてパーティに華やぎを添えていた。


マラソン後のスパまでが楽しみのリゾートラン
女性層への訴求に有効


 大会当日。コースはハーフマラソンと10キロ、5キロの3つで、スタートとゴール地点はグランドハイアットバリに隣接する、ブランドショップなどが建ち並ぶ「バリ・コレクション」前。ングラ・ライ・バイパスを空港近くまで片側1車線を通行止めにして、コースとしている。距離によって折り返し地点がそれぞれ異なり、ランナーは計測用チップを縫いこんだゼッケンをつけて走る。

 ハーフマラソンのスタートは早朝6時。まだ夜が明けきらず、少しばかり薄暗い中にぞろぞろと人が集まってきた。その表情は明るく、緊迫した雰囲気はない。ハーフマラソンがスタートし、その10分後に10キロ、さらに5キロと順にスタートをきっていく。5キロのファンラン&ウォークには地元の小学生や中学生が参加し、にぎやかなスタートとなった。コース状態は、車道部分はきちんと舗装されており、ごみも少なく走りやすいが、ほかのランナーを抜くために歩道に乗ると、大きな穴が開いていることがあった。なるべく指定されたコース内を走るほうがいいだろう。

 ハーフマラソンでは欧米人の参加者が上位に多く入っていたが、男女ともに5キロマラソンの上位50位のほとんどを日本人が占めた。外国人でも上位入賞者には賞金が出るとのことで「来年はがんばりたい」と再挑戦の意欲を見せる参加者も。「バリ島らしい笑顔に包まれたのんびりした大会」と楽しく走れたことで満足そうな声が多く聞かれた。特に女性は大会後のスパまでが楽しみのようで、なかにはスパで知られるウブドなどにあるリゾートに宿泊し、マラソンのために早朝4時にリゾートを出たというツワモノの姿も。マラソンで気持ちよく汗をかいてスパでリフレッシュする、というのがひとつの定番アクティビティとなりそうだ。


オプショナルツアー感覚の参加、社員旅行にも可能性

 毎年バリ国際マラソンに参加し、ツアー造成をしているマックスエーは、今年も社員全員が参加。女性社員2名はそれぞれ「朝の神聖な空気のなかを走るのが気持ちよかった」「子どもたちと走っていると、童心に還ったように楽しく走ることができた」とリゾートランならではの魅力を話してくれた。ツアー造成には「オプショナルツアーに参加する感覚で5キロ、10キロのマラソンに参加してもらう。サーフィンやリゾートを目的にバリに行く人で、プラスアルファで何かを体験したいという個人、ファミリー、グループに提案していきたい」とのこと。また、社員旅行という形で同僚とともに参加し、一緒にひとつのことに打ち込み一体感が生まれたことを実感したことから、社員旅行にもおすすめだという。

 実はバリでは1986年から1995年まで、日東バリマラソンが開催されており、日本からマラソン目的でバリへ向かう人は毎年1000人規模あったという。当時はバブル期であり、また日本の企業がスポンサーであったため国内での宣伝活動も大きかったことが考えられるが、かつてはそれだけの需要があったのである。今はバリマラソンの存在自体がほとんど宣伝されていない状態だが、広告の仕方によっては潜在的な需要を喚起することができるのではないだろうか。

 健康、美容などさまざまなキーワードを盛り込むことができるバリ国際マラソンは女性層へ特に強いアピール力を持つ。オリジナリティの高いスパメニューや健康的な滞在を追及するリゾートと掛け合わせたプランなら、ランナー以外の需要も取り込めるだろう。マラソン大会は午前中の早い時間には終わるので、スパを受けるためにバリ島のほかのエリアへ移動するのも十分可能。年齢層に合わせてさまざまなプランを考えたい。


海外マラソンへの参加者増加

 国内でのマラソンブームに伴い、海外でのマラソン大会
に参加する人が増えている。例えば、シドニーマラソンで
は毎年500人以上、マカオマラソンでは300人以上の日本人
参加者がおり、日本人の海外マラソン参加者は多い。特に
マカオでは2009年度の日本人参加者363人のうち、200人以
上がマラソンのために日本から現地を訪れているという。

 また、サイパンマラソンも2007年に149人だった競技参
加者のうち、116人が日本人。それが2010年には563人中
500名以上が日本人であったという。3年前は、日本人は0人だったというマカオマラソ
ンの日本人参加者の増加や、次々に出版される海外マラソンガイドなどを見れば、海外
マラソンがいかに注目されているかがわかる。



取材:岩佐史絵