取材ノート:学園祭に見る若者の海外旅行観、「一歩踏み出すきっかけを」

  • 2010年1月20日(水)
 若年層の海外旅行離れが業界の関心事となって久しいが、現役の学生たちは実際に海外旅行をどう捉えているのか。日本旅行業協会(JATA)のビジット・ワールド・キャンペーン(VWC)2000万人推進室が実施した「学園祭応援プログラム」は、学生の海外旅行需要を喚起するのが目的だが、応募された企画は学生の海外旅行に対する思い、考えが反映されたものといえる。今回は選出企画の中から、桜美林大学国際ツーリズム研究会のプログラム「COME&SEE WORLD〜大学生、長い夏休みどう使う?〜」を訪れ、動向を探った。
           
                    
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行かない理由は「機会がなく」「お金がない」

 桜美林大学国際ツーリズム研究会のメンバーは総勢18名。うち2名は現在、海外留学中だ。主な活動は、旅行業界向けのセミナーやイベントに出席したり、今回のように旅行業界の募集にあわせて企画を立案するほか、学生の国際会議にも参加するという。今回の企画では「若者の海外旅行意識調査」として、東京、名古屋、大阪の大学生300人を対象に大規模なアンケートを実施した。内容は海外旅行経験や海外旅行へ行く目的、海外旅行へ行かない理由などを問う全6問。

 とりわけ注目すべきは、海外旅行へ行かない理由だ。「機会がない」と「お金がない」の2つに大きく分かれ、例えば東京では前者が59%で後者が29%を占める。このアンケートは研究会のメンバーそれぞれが知人、友人の伝手を頼って配布した。メンバーは海外旅行によく行く学生であるため「海外旅行に興味のある学生を中心にしたアンケートになっていると思います。実態はこの数字より厳しいものかもしれません」と、同研究会会長の住吉まゆ子さん(ビジネスマネジメント学群2年生)。

 住吉さんの実感では、海外旅行によく行く学生とそうでない学生の旅行経験には大きな差があり、ニ極化しているという。海外旅行に費やす金額にもその傾向が顕著で「1年間に海外旅行に費やすことのできる金額」では、3万円未満が9%、5万円未満が7%に対して、20万円以上を出す学生も12%いる。会場を訪れていた男子学生(海外旅行経験5度以上)に聞いてみると「1回あたり20万円くらいまで」で、回数は1年に2、3回。20万円は「アルバイトで貯められるぎりぎり」だ。一方、海外旅行に2度行ったことがあるという女子学生2人組は、5万円以下。「国内旅行なら2万円くらいで行ける」し、「5万円以上は高すぎて、そこまでお金をかけたくない」のが理由だ。


学生の1、2回の海外旅行経験は未経験者と同じ

 住吉さん自身は中学2年生のとき、家族旅行でシンガポールへ行ったのをきっかけに、9ヶ国16回と海外旅行経験は豊富だ。昨年夏まで1年間、バンクーバーへ語学留学もしている。大学生になってからは自分で企画をして、友人をともない5回以上の旅行を楽しんでいる。

 「1度でも海外旅行で感動した経験のある学生は、次の休みにも海外旅行に行きたくなると思うんですよ」と住吉さん。アンケート結果では「今までに海外旅行に行ったことがある」学生は78%もいる。だが、そのうち1回が35%、2回が23%で半数強を占める。1、2度行ったきり、行かなくなった理由を解明するのも、業界の重要な課題になる。

 これについて住吉さんは「海外旅行経験2回までは、未経験者と捉えていいと思います」と話す。今の学生は修学旅行で海外旅行を経験することが多い。また、子どもの頃に家族旅行で1度くらい海外に行く学生もいる。つまり「1、2度というのは自分の意志ではなく、半ば強制的に行った海外旅行。自分で手続きをしないし、行き先も選ばないから、実際には未経験者と変わらない。修学旅行は思い出として楽しいですが、団体行動が基本で自分の意志では動けないので、海外旅行としての感動は体験できないと思います」との見解だ。


家族の海外旅行経験もポイント、「機会があれば行きたい」

 会場を訪れた若者に話を聞くと、家族の影響の大きさが見られた。家族旅行をよくしたり、海外旅行によく行く兄や姉がいると、経験値は高くなる。パスポートやビザの取り方からツアーの選び方、おすすめのデスティネーションまで、いわば海外旅行の技術といったものを伝えられるので、高校を卒業した頃から兄弟姉妹や友人と一緒に、海外旅行を計画するようだ。一方、家族の経験が少ない学生の場合、大学生になっていざ自分たちで海外旅行に行こうとしても、どうしていいかわからないのが実状のようだ。そのため、同研究会では学園祭で、パスポートやビザの取得といった未経験の学生には障害になったり、億劫と思われるような事柄の手続き方法や、参考になりそうな役に立つ旅行用品などを展示紹介した。

 海外旅行経験が「修学旅行でオーストラリアに1回、子どもの頃の家族旅行でグアムに1回」という19歳の男子学生は「機会さえあれば、海外旅行にぜひ行きたい」という。それではその機会とは何なのか。「誰かが連れて行ってくれなければ、このままだと新婚旅行とかになっちゃいますね」。海外旅行に行かない学生の典型的な例だ。


「旅行のパンフはベテラン向け」、業界はストーリーテラーの育成を

 会場では、各メンバーが海外旅行先で撮影した映像を流したり、「自然」「世界遺産」「ショッピング」などジャンルごとのおすすめランキングも発表した。訪れていた若年層からは「おすすめの場所などは参考になる」のほか「行けば何ができるのか、具体的に教えてほしい」という声があった。

 また、会場には各社のツアーパンフレットが置かれていたが、手にする訪問者はほとんどいなかった。ある女子学生は「私はケアンズに行ってみたいんですけど、ツアーパンフレットって似たようなツアーがいっぱいあるし、よく知らない地名がずらずら書いてあるだけで、知識がないとわかりづらい」という。同行の女子学生は「料金も複雑で、どう見たらいいかわからない。旅行会社のパンフレットは旅のベテランさん向けで、若者向けではないように感じる」そうだ。

 住吉さんは「学生は海外に興味はあるんです。私たちメンバーだって、もっともっと知らない国へ行ってみたい。学生が知りたいのは、どこに行ったらどんな感動体験ができるのかということ。旅行会社には画一的なパンフレットより、感動経験を伝えてほしいと思います」と話す。それには学生のクチコミも有力だが、作家や漫画家、旅行ジャーナリストといった、自分たちより少しベテランが海外へどう行き、どんな体験をしているのかを知りたいという。あくまで少数への聞き取り調査だが、テレビ番組は「綺麗な景色がつながるだけで結局、お金がいくら位かかるのか、どんな手続きが必要かがわかりづらい」(21歳、男子学生)ため、あまり参考にはならないようだ。

 学生の需要を喚起するストーリーテラーを発掘するとともに、産学協同プロジェクトなど学生の活用、次の学生になる子どもを含む家族旅行の開拓などが次の一手となるだろう。学園祭プログラムから「若者の旅行離れ」対策の端緒が見えてきた。


プロと違う学生の目線に注目を

 「VWC学園祭応援プログラム」の企画立案者であるVWC2000万人推進室担当部長の荻野義
一氏は、選出した5団体の学園祭をすべて視察、どの企画も充実した内容だったという。
なかでも桜美林大学の国際ツーリズム研究会は系列の中高生までを視野に入れ、パスポー
トの取得方法といった初心者向けの内容を展示して、海外旅行の気軽さを広くアピールし
た点を評価。また、ユニークな試みとして松本大学の企画をあげた。地元の人にも開放し
たシンポジウムを開催し、海外旅行のみならず訪日外国人客を迎える地元にも役立つ内容
だったという。荻野氏は「学生には旅のプロのとは違う目線がある」と話し、「旅行会社
には学生の目線を上手に取り入れて、若年層マーケットを拡大してほしい」と語った。

 VWCでは2010年、2つのターゲットを取りあげて重点的に活動を展開していく予定で、そ
のうちのひとつに海外旅行に興味のない学生への啓蒙をあてている。そのアプローチ方法
として、スポーツが好きな学生が本場でスポーツ観戦をしたり、音楽をする学生が民族音
楽に触れるといった体験型ツーリズムと、誰と行くかを重視する今の学生の志向にマッチ
したコミュニケーション型ツーリズムの2つを検討している。また、これまでの学生向け
旅行では、卒業旅行ばかりを注目してきた感があるが、来年は大学1、2年生の若いうちか
ら海外旅行のすばらしさを体験できるよう、アピールしていく考えだ。



産学連携の可能性、学生の力

 「業界は、学生の力にもっと注目してほしい」というのは、同研究会を指導する鈴木勝
教授。日々学生と触れている同氏は、学生のネットワーク構築技術、課題を与えたときの
集中ぶりなどを高く評価する。例えば、今回は活動費用として30万円がVWC推進室から支
援された。学生にとって30万円は「ものすごい大金」。この費用で15人の学生が約2週間
フル活動し、300人にマーケティングリサーチを行った。写真や映像も多用しており、企
画全体では賄い切れない部分もありそうだが「学生時代の今しかできないことを、一所懸
命にやりたい」と、住吉さんもいう。

 「学生は、時間はあるし体力もある。目標や課題を与えれば、その情熱はすごい。業界
は学生の力を気軽に使ったらいいんですよ(笑)」と鈴木教授。会場の片隅では、鈴木教
授から「観光で町田市の町興し」の課題を与えられた男子学生が、一心不乱に企画作りに
取り組んでいた。



取材:江藤詩文

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